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2006/12/04

悪女について/著者:有吉佐和子

bad

職場の後輩から、おすすめの小説があれば教えてください、と訊かれた時、パッと浮かんだのが「悪女について」だった。有吉佐和子の作品は高校~大学時代、夢中になって次から次へと読み耽った。

ストーリーテラーの名を欲しいままにした彼女の作品には、まさに読者をぐいぐい惹き込む魅力がある。とにかく面白い。怒涛の吸引力で、あっという間に読み終えてしまう。しかも読みやすい。読者に大変親切な書き手だ。

「悪女について」は起承転結がなく、小説の始まりから、すでにヒロインが殺害されてしまっている点が特異だ。死人に口無しである。そして20人以上にのぼる周囲の関係者へのインタビューによって、彼女の人間像を浮き彫りにしていく。よって、内容は全て取材を受けた人物の言質のみで構成されるという、大胆な手法をとっている。

ある人は彼女を「冷酷な女」と吐き捨て、ある人は「聖女のような女」と称える。彼女を殺した人物は果たしてこの中にいるのか?
興味深い終章では、彼女の2人の息子が、おのおの全く違う母親像を語り始める。…

彼女の真の姿は?事件の真相は?発言者の主観や記憶違いも入り混じって、読めば読むほど迷宮入りになる。彼女は悪女なのか?人間の本質を暴き描いた傑作である。

悪女について

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