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2014/07/10

2度目の鳩

観逃していたミヒャエル・ハネケ監督の2012年作『愛、アムール』をWOWOWにて鑑賞。
老音楽家夫婦が主人公で、半身麻痺となった妻を夫が自宅介護する内容。出演はジャン=ルイ・トランティニャン、エマニュエル・リヴァ、イザベル・ユペール他。
日本で高齢化問題の啓発に先鞭をつけた小説としては有吉佐和子の『恍惚の人』が名高いのではないかな。内容はすっかり忘れてしまったが、"蟹糞"という単語がやたら記憶に残っている。

Amour

(ネタバレ含む)
ハネケ作品鑑賞は先日の『ピアニスト』に続き2本目。やはりどちらとも解釈できるようなシーンが散見される。シーンとシーンは意味深く繋がっているようだ。

・妻の介護当初、夫が昔話として過去の映画鑑賞の記憶を初めて妻に打ち明けたシーン、これが最も作品を象徴していると感じた。観た映画の内容自体は忘れても感動を他者に打ち明けたいという大切な気持ち、それは即物的にみれば、記憶の変容に過ぎないものであっても、同時に経験から得た情緒的な側面も合わせ持つ。また、このシーンで妻が夫に対するイメージについて初めて口にする素振りも印象的。

・夫が知人の葬儀から帰宅した際、妻が中庭に面した窓辺の下で車椅子からずり落ちたように座り込んでいる。夫が妻を車椅子に戻し、居間に移すと、彼女は今日の葬儀がどうだったか訊きたがる。こうしてシーンの前後と会話から、妻が投身自殺を図ろうとしたことを観客に静かに(意地悪に?)悟らせる。

・介護人の女を解雇する際の、夫の言い分が正しいかどうかが公平に描かれていないが、女の妻への髪の梳き方の強引さ、無理やり手鏡に映そうとする行為など、夫は見抜いていたのではないか?

・一人娘は母を憐れに思い涙ぐもうとも、実質、介護の何の役にも立たない。しかし、嫁いで子供も持つ身であり、彼女を一概に責められないのである。夫婦の問題として、夫は妻の姿を誰にも見せまいと部屋に鍵をかけてしまうほどで、娘に依存する考えは毛頭無かったのだ。

・鳩が舞い込んでくるシーンが二度あり、一度目は不意の闖入を夫がごく普通に追い払う様子だったのが、妻を看取った後、二度目のシーンでは、覚束ない足取りで追い回して膝掛けで捕獲する。
その鳩がどうなったかは、夫がメモを遺すシーンで、すぐに逃がしてやったという記述から、嘘がみてとれる。ここは妻と鳩を重ねて観ていいだろう。水と鳩の描写からノアの方舟からの暗喩との解釈もあるらしい。

コメント

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Re: No title

こんばんは。

> 奥さんと二人で観てみました。いい作品を紹介して頂いてありがとうございました。

夫婦でこれを観られるなんて、ちょっと羨ましい気もします。ハネケ作品はもう一本観る予定です。

>カッコウの巣の上で』の一場面を思い出して、辛くなりました。脱線しますが、あの映画も良かった。
懐かしい映画ですね。婦長のインパクトは強烈でした。

No title

奥さんと二人で観てみました。いい作品を紹介して頂いてありがとうございました。

マクラで顔を押さえつけるシーンは、『カッコウの巣の上で』の一場面を思い出して、辛くなりました。脱線しますが、あの映画も良かった。