ベツレヘムのファースト

今年のベスト・アルバム選出記事は半期締めにして5枚、次回記事にて報告します。この半年間のポピュラーCD購入枚数はたったの15枚程度ですが。年一で締めると、どうしても直近購入のお気に入りを推しがちなもので、年2回に分けて散らすことに。

その次回ベスト記事につきまして、今回もパスワードを新たに設定しますので、ここにヒントを載せます。
・管理人が使用するAVアンプのブランド名を半角英小文字で
・つづけて、管理人が今年に入って買った、回転式CDラックの収納可能枚数を半角数字で
以上、スペース無しの計10桁になります。これらの答えは記事カテゴリー"音楽雑感"を遡ると見つかります。

songsfromこちらはジョニー・ハートマンの1955年録音ベツレヘム・レーベルのファースト盤に別テイクを加えた新装リマスタCD『ソングス・フロム・ザ・ハート+6』(2012)。Appleで聴いたこの盤が、僕にとってハートマンとの60年越しの出会いとなりました。

結局この半年間に、この盤含めて彼のアルバムは4枚入手。このへんで収集は打ち止めにしようと思うが、あと一枚あと一枚とつい手を伸ばしてしまう。この、黒人ならではのコクを湛えつつ洗練されたベルベット・クルーナーは、プロ歌手に徹したマナー良さで、ロマンティックに寄り添ってくれるのだ。彼は'70年代までに数度、来日していたようですね。

ピアノ・トリオをバックに12曲のヴォーカルを堪能できる本盤だが、日本人エンジニアによるリマスタリングの仕上がり感には、やや疑問が。高域が目立ちすぎる。国内廉価盤で発売されたこのシリーズ、メル・トーメも同じ印象だった。
これは、ノイズを除去する意図の働き過ぎが原因と推測するが、どうなのだろう? 元の録音自体、恐らくトラック毎にムラがあるために、ヴォーカルを聴き良くした腐心は感じられるものの、ヴォーカルとバッキングの乖離がイビツに聴こえる。当時のアナログ盤を知ってる方の感想を伺いたいところ。

and I Thought about you

いまのテンプレートに変えてから、トップページの画像をみてネタがあらかた分かれば、記事本文なんて見なくていいや、とスルーされがちなので、その隙に本文途中から毒を吐くとか、ところどころ本音をチョロッと混ぜて気晴らししたいと思います。

aboutyouこれは届いてから早速リピート中のお気に入り盤。ジョニー・ハートマンの『And I Thought About You』。1997年発売ですが、1959年録音盤のリマスタ・リイシューとなります。ハートマンのレコードの中でも、ジャケ写がイイほうではないでしょうか。

クレジット詳細の記載が無いので、Amazonレビューを参考にするには、ベツレヘムとインパルス、両レーベル在籍期間の狭間にあたるルースト盤となるそうだ。
ベツレヘムのファースト録音盤は先日入手し、後日記事にするつもりだが、インパルスのほうは、かの『コルトレーン&ハートマン』が名盤の誉れ高いが、他の2枚は試聴したところ音質は聴き易いのだが、伴奏がとびきり良いとは思えない。ハートマンの歌唱を時々妨げる管楽器の音量が玉に瑕という印象で手が出ない。

本盤はAppleのラインナップには無く、動画サイトに1.2曲挙がっているのを聴いて良盤と確信。あまり取り沙汰されないアルバムのようだが、ルディ・トレイラー率いる木管を中心とした小オーケストラ規模の伴奏がオーセンティックかつロマンティックにハートマンを支える。彼のヴォーカルはスピーカーのド真ん中から、聴き良い歌い口で流れる。「Little Girl Blue 」、「How Long Has This Been Going On?」を含む全12曲。

アルバム・タイトル・チューンの「And I Thought About You」は、軽やかな曲調に、汽車の旅をしながら愛する人への未練が綴られる。窓に下ろしたシェードの隙間から、君のほうへ向かう線路を見つめるのさ・・・。

シニアは黙殺する

BBC制作の英国クライム・サスペンス・ドラマ『「埋もれる殺意」~39年目の真実~』(2015)の全6話一挙放送を、途中、風雨のためBS放送が途切れつつも、夜通し鑑賞。

unforgot【ロンドン。取り壊された建物の地下室の床下から若い成人男性のものと思われる人骨が見つかる。警部キャシーと部下のサニー巡査部長は事件の捜査を開始する。現場に残された手掛かりから、被害者の日記が見つかり、遺体は39年前に殺された17歳の少年のものだったことが分かる。・・・】(WOWOWサイトより)

人種差別、産後うつ、セクシャリティ差別など当時との現情の比較を絡めながら、幸福に過ごすシニア達の過去が暴かれていく。容疑者は4人で、結果的に犯人以外の3人についてはサイド・ストーリーであった訳だが、各人、秘密を抱えているため、視聴者には怪しく映るように作られてる。証言シーンを重ねながら人物造形が丹念に浮き彫りされ、各家族の物語が完結し、最終話まで捨て駒キャラが出ないのは見事。
刑事を始めとする人情味を打ち出しながら、親の威厳が損なわれた真相後の、子供からの仕打ちを描くなど居た堪れない現実感も残す。若いときの彼らが違う人生であればと神妙になる。現在、国内版ソフトは未発売。

▼原語トレーラー

1970sのアトランティック・デュオ

先月特集したバリー・マニロウ記事を機に、バリーがカヴァーした「秋風の恋」のオリジナルを辿って、イングランド・ダン&ジョン・フォード・コーリーの『England Dan & John Ford Coley: The Atlantic Albums + Extra tracks』(2CD)(2015)を入手。特にヒットしたであろうファーストは、Appleでは聴けないんだよね。

danengland

このデュオの存在については、バリーのカヴァー・アルバムの解説を読むまで知りませんでした。Amazonレビューなど参考にすると、リアルタイムに聴いた世代は、このアトランティック在籍の初期4枚のアルバムに、日本のみの発売シングルをコンパイルしたリイシューにどなたも感激されていますね。リマスタもされているようです。

リイシュー制作側の心がこもった企画であることは、ライナーの丁寧な作りからも窺える。日本のみの発売シングルは「キープ・ユア・スマイル」という曲で、当時、ブレンディのCM起用された(その日本盤ジャケも掲載)。ポール・ニューマンがコーヒー飲んでた画は、子供のころ見た覚えがあるのですが、曲の記憶は、、。あらためて聴くと親しみやすい。
S&Gに共通するようなピュアなハーモニーを聴かせながら、音楽性はAORを吸収したフォーキーなポップ・ソングやロック、ファンクなど、'70年代要素を孕みながら、デビュー盤から十分に咀嚼された品のいい高パフォーマンスなのに驚く。ふつうファーストはもう少し荒削りなものかと思うが。二人が古くからの郷里の友人で、イングランド・ダンの兄が先に、同じくデュオで活動していた(シールズ&クロフツ)のも好影響となったのだろう。
'70年代録音の丁寧に制作された音像と清涼感に、ペーパーにも拘わらず車を出したい気分に駆られた。

素晴らしき哉、性研究

ジョージ・W・ブッシュ政権時代の2000年代に、1950年代回帰の映画作品が多く撮られた理由を最近知り、そういえば自分は'00年代のアメリカ映画に触発された作品が幾つかあったのを思い出す。『ブロークバック・マウンテン』『めぐりあう時間たち』など。以下もずっと観ようと気にして忘れていた作品。



『愛についてのキンゼイ・レポート』(2004)、ビル・コンドン監督・脚本、フランシス・フォード・コッポラがプロデューサーとして参加。
実在人物のキンゼイ博士は、当初は生物学の大学教授だったが、自身の結婚を機に性生活の悩みを抱え、また学生から性に関する相談を受けた事により、性知識の講座をスタートさせる。

時代も時代、'50年代の米国は、宗教モラル(ファスナーの開発が、世を淫らにしたという説教シーンに失笑)を始めとする異性間の認識不足はもとより、自慰行為は病気を招くと、腕が届かぬよう矯正器具を付けさせられたらしい。性行為の正しさとは?自分は異常? ゆえに博士の2万人近くに及ぶ聴き取り調査研究は画期的であった。
そもそも博士の生物学の研究対象であったタマバチの交尾には個体差があり、多様な相違は宇宙の基本設計である、これが後の研究にも基本概念となる。

コメディタッチかと思いきや博士の飽くなき追究は感動的ですらある。自らアシスタントとの同性愛体験を妻に報告し、研究の一環として承服させるなど、難しいシーンをリーアム・ニーソンとローラ・リニーが好演。
研究書は空前のブームとなったが、やがてポルノ紛いとの批判を受け、財団・スポンサーからも見放され、博士は失意のうち病に倒れるが、調査を継続すべく次に面接した年配女性の性体験談は、博士はもちろん観る者も励ます名シーンとなった。

アカペラ・ド・ブラジル

先日、中古購入し初めて聴いた彼女たちのセカンド・アルバムが良かったので、遡ってファーストも入手。まだCDが主流の時代だったせいか、中古が安く出ている。1円+350円(手数料)也。

dobrasilトリオ・エスペランサ『A Capela Do Brasil』(1992)。ファースト・アルバムといっても姉妹は古くから活動しており、以前は男兄弟と二人姉妹のメンバー構成だったようだ。アルバム・タイトルはもちろんあの名曲『Aquarela Do Brasil』からもじったもの。

やはりチャーミングなアカペラ中心となっているが、デビュー盤とあって、話題作りを狙ってかゲストが多くフィーチャーされる。カエターノ・ヴェローゾ、ジョアン・ボスコ、イヴァン・リンス、ジルベルト・ジルなどベテラン他、男性コーラス・グループなど。バッキング付きも比較的多い。アルバムの性格としてはヴァラエティに富んだファーストより、スリムに姉妹の実力を押し出したセカンドのほうが好きだが、パフォーマンスのクオリティはいずれも申し分なく、シャッフルするように2枚をとっかえひっかえ聴いてる。

1曲日本語の聴き慣れない歌「Watashi(Sapporo 76)」がある。これは'76年のポール・モーリア日本公演の際、札幌で知り合い、仲良しになったサンディ(歌手の鈴木アヤ子さん)に当時作詩をしてもらった曲で、特別な思い出がありアルバムに入れたそうです。(セカンド・アルバム・ライナー参考)

▼Watashi ライヴ

つきまとう男

これは過去にレンタル鑑賞した筈だったが、再見した今回のほうが色々気づけて感激。無理して新作映画に足を運ぶより断然面白いや。特典映像のコメンタリーによれば、映画史上初のストーカー登場作品になるらしい。

strangers『私は告白する』と合わせて買った『見知らぬ乗客』(1951)(Blu-ray)。ヒッチコックのワーナーでの第一作監督作品。主演はファーリー・グレンジャー、ロバート・ウォーカー、ルース・ロマン。
スター・テニス・プレーヤー(グレンジャー)が、特急列車に乗り合わせたファン(ウォーカー)から、「あなたの不仲な奥さんを殺してあげますから、僕の父を殺してくれませんか」と交換殺人を持ちかけられ、一方的に実行されてしまうというもの。

尻軽女のグレンジャーの妻が、男たちと夜の遊園地で戯れる後を、ウォーカーがつけるシーンが魅力的。尾行に気づいた妻はウォーカーにも色目を使い、途中ウォーカーは腕試しに興じる。これはいわば絞殺準備の力自慢だが、存ぜぬ女には自分へのアピールと映った。この犯罪とセックスが交差する駆け引きの微妙な描写が何とも妖しくて、60年以上も前の演出とは思えない。

その有名な絞殺シーンの後、次は君の番だとグレンジャーはウォーカーから執拗に脅迫される。その一連のストーキング描写では、特にグレンジャーがテニスの試合中、ボールの行方を左右にかぶりを振りながら見守る大観客の中、ただ一人まっすぐ凝視する者がいる。クロース・アップ。それこそウォーカーだったのだ。
登場人物がそれぞれ、うまい具合にミスをやらかし、物語がうまく機能している。グレンジャーの恋人のロマンもお飾りには終わらない、ストーカーの母親と対面するという異様なシーンが見ものだ。
そして、キーパーソンとなる助演女優はヒッチの娘、パトリシア。絞殺した女と瓜二つのメガネ顔に、ウォーカーが気絶するシーンは見事。殺人者も記憶に傷を負うという繊細な表現に驚いた。

この作品を久々に観る気になったのは、先日の『エデンより彼方に』を思い出したからだった。その監督がトッド・ヘインズ。ヘインズは今年初めの公開作『キャロル』で、またしても'50年代を舞台に女性同士の恋愛を撮った(当方未見)。そして『キャロル』の原作者は、当時別名で出版されたが、あの『太陽がいっぱい』で知られるパトリシア・ハイスミスであった。この『見知らぬ乗客』も彼女の作品で、原作はいずれも未読だが、同性同士の葛藤が生まれる点では、なるほど共通する描写が感じられる。本作において、局面で"I Like You"というウォーカーのセリフにグレンジャーが激怒し、殴られるシーンがある。ファンの過ぎたる行為とはいえ、ここに鋭敏なヒッチは、メタファーを込めたに違いない。

ブラジル系3枚試聴

Appleの契約切れ直前に追い込みで以下3枚ほど試聴。

cicoシコ・ブアルキ『Sinal Fechado』(1974)、ブアルキは大物だし、一枚は持っていてもと度々試聴するのだが、最終的にヴォーカルに馴染めず見送ってばかり。本作は、先日見つけたカエターノ・ヴェローゾとテレーザ・クリスチーナのデュエット映像で取り上げられた曲「Festa Imodesta」のオリジナル録音を辿って知った。ピュアでナチュラルな曲とアレンジが美しい。現在、入手困難? https://youtu.be/jGHnt_fb3tQ

rice99エンリッキ・カゼス&マルセーロ・ゴンサルヴィス『ガロートの思い出』(2008)、弦楽器奏者ガロート(1915−1955)作品に取り組んだアルバムだそうで、いわゆるショーロにあたると思うが、カヴァキーニョと7弦ギターだけのアンサンブルが臨場感をもって豊かに響きます。ミュージック・マガジン2008ベスト・アルバム、ワールド・ミュージック部門6位。

afrobossaデューク・エリントン・アンド・ヒズ・オーケストラ『Afro Bossa』(1963)、毛色の変わった作品だが、やはりアレンジは素晴らしく、奔放なようで上品。'60年代録音の太くて深いパーカッションの音色が楽しめる。蒸し暑い日本の夜に合いそう。購入候補。

告白から告発へ

途中まで集めかけていたワーナー・ブラザーズ発のヒッチコック作品、このたび『私は告白する』(Blu-ray)を入手。モンゴメリー・クリフト、アン・バクスター主演。



これはずっと未見のままでした。ヒッチコック×トリュフォー対談本『映画術』において、ヒッチ自身があまり気に入ってなかった記述の記憶があり、内容的にもシリアスな予想がつき、後回しになっていたのです。
このへんのクラシック映画になると、ブルーレイでも手頃な価格になっており、この機会にと。

観たところ、面白い! 1953年作でこれは洗練されてる。殺人者の告白を警察に明かせず、逆に自ら濡れ衣を着せられ、断罪寸前まで追い詰められるカトリック神父を演じたクリフトの演技は、重厚でハマリ役だったのではないだろうか。当時の批評家たちには芳しくなく、本人は落ち込んでいたそうだが。

ただ、その彼のメソッド演技法に、ヒッチは関心無く折り合いが難しかったようだ。ヒッチの娘パトリシアによれば、窓を見上げるカットを追加撮影する際、「僕だったら、そんな演技はしない」と答え、結果撮影に4時間もかかったという。

神父と幼馴染だった恋人(バクスター)とのくだりは、ヒッチらしくない少女趣味的な描写との評だったが、これは全体のバランスをみて、尺も限られるしあの演出になったのではないかな。役者が揃い、予想以上にスリリングで、群集をクライマックスに使うシーンも巧みだった。

トゥーサンの最期録音

アラン・トゥーサンの新作が本国で発売されたばかりと知り、早速Appleで試聴しました。



昨年11月に逝去したトゥーサン、僕はノンサッチからの『The Bright Mississippi』(2009)しか持ってなくて、他のアルバムはほとんど知らないままですが、最期録音となる新作がジョー・ヘンリーのプロデュースと知り嬉しくなった。あの『The Bright Mississippi』の音場で他の曲も聴けるなんて。
トゥーサンのピアノは当初、このジャンルならではのパーカッシヴなタッチを予想していたら、とても優しい教育者のような語りを聴くようで、解れました。

アルバムのクレジット等詳細は、1曲試聴も可能なコチラを参照なさって下さい。今回の女性ゲスト・ヴォーカル、いいですね。

'50年代メロドラマの解放

WOWOWのサイトに『町山智浩の映画塾』というのがあって、放送作品の各解説が動画で見られる。そのうち自分が過去に劇場公開時に観たトッド・ヘインズ監督、ジュリアン・ムーア、デニス・クエイド主演の『エデンより彼方に』の解説があり、この'50年代を舞台にしたメロドラマに、基になるダグラス・サーク監督、ジェーン・ワイマン、ロック・ハドソン主演の『天はすべて許し給う』という'55年のアメリカ映画があったことを思い出した。

far from heaven◀『天はすべて許し給う』(原題 All That Heaven Allows)(1955)

その『天はすべて許し給う』のほうは現在、国内単品の商品化されておらず、先ほどYoutubeで原語のまま初鑑賞した。ほとんどリスニング出来なかったが、メロドラマなので粗筋はシンプル、特に後年の『エデンより彼方に』で、改変された点について興味深く観た。

基となる『天は・・・』では、寡婦となった上流家庭のヒロイン(ワイマン)が、雇っている年下の庭師(ハドソン)と恋に落ち、社交の場で噂になり、息子と娘の反対にあい再婚を断念するが、子供達の巣立ちを機に、もう一度彼にやり直そうと会いに行く・・・、というシンプルな粗筋で、今の感覚じゃ奥ゆかしいほどのメロドラマだ。
ヒロイン演ずるワイマンについては有名とは知りながらこれが初見なのだが、ルックスが平凡で、ハドソンが男前のスター然とし過ぎて、いくぶん見劣りを感じてしまったのだが、このキャスティングは女性観客に希望を持たせる商業狙いだったのだろうか? 「私だって、いつかはロック・ハドソンみたいな男性と」というような。

farfromheaven2▶『エデンより彼方に』(原題 Far from Heaven)(2002)

現実にハドソンはエイズで亡くなった最初の著名人となった。その件と、当時のハリウッドの厳しい検閲による表現の抑圧という背景を、『エデン・・・』のヘインズ監督は同じ'50年代と設定を変えずに、現代の視点で物語化する狙いがあったのだろう。
オリジナルでは既に他界していたヒロインの夫は、『エデン・・・』においては存命で、当時のステイタスでもあった家庭用TVメーカーの重役として改変し、このキャストにデニス・クエイドを当てた。クエイド自身初となる、良妻賢母の妻に隠れて、夜中の社屋で男性と交わる役だ。そして夜食を届けにやってきた美しい妻(ジュリアン・ムーア)に目撃されるというもの。

ヘインズ監督はここにロック・ハドソンが果たせなかった、役柄と自分との乖離の埋め合わせを手伝ったのかもしれないと、勝手に想像。そして新たな庭師の役どころは、声の渋さはそのままに、知的なハンサム黒人(デニス・ヘイスバート)に変更。
妻ムーアは、このゲイの夫の治療~離婚と、黒人との恋の始まりにより、白人上流家庭地域のコネチカットの噂の的となり、板挟みのまま孤独なラストを迎える。
ハッピーエンドを予感させるオリジナルと異なるラストだが、彼女の子供達が未成年の設定であることが、彼女の女性の自立を促す行方となることで、これも大きく改変された意味を持つ。

町山氏の解説を聴いて驚いたのは、2000年代のアメリカでは、こうした'50年代回帰の作品が一時多く撮られており、背景にブッシュ政権によるキリスト教原理主義の台頭があるという。現代を生きる自分は、こうして過去の作品の表現制約をまざまざと見せつけられ理解するが、今の今起こっている事柄については案外鈍感で節穴なものだ、と気づかされる。メロドラマという警告を視たかのようだ。

▼All That Heaven Allows(1955)フル視聴可(約90分)
https://youtu.be/3sPqBZmBy5I

リズム隊のいない弾み

esperanca

ブラジルのシンガーを探しながら、ソロではなかなか見つからないなぁ、とAppleをうろうろしているとアカペラ姉妹が楽しいと気づき、フランス在住、トリオ・エスペランサの『イパネマの娘』(1995)(現在、廃盤のよう)を中古購入。20円と激安だったが、これに手数料がかからなければもっとハッピーなんだけど。
先日、唯一フルアルバム試聴できた『De Bach A Jobim』(2010)も素晴らしいが、出来ればブラジル曲の選曲中心のものを最初に入手したかったので、このアントニオ・カルロス・ジョビンを中心とした内容はうってつけだった。偶然にも、姉妹のこの録音後1994年、ジョビンは逝去。姉妹の2枚目のアルバムであり、原題『Segundo』はセカンドの意味。1曲スティーヴィー・ワンダーも取り上げている。

女声3声のハーモニー構成は必要最低限のパートであり、属七の和音などは第5音を省略しているのだろう(ハ長調でいえばG7が属七のコード。ソ・シ・レ・ファの構成音のうち、レを省略しても響きは成り立つ)。
あまりに姉妹が巧すぎて、サンプリングなのでは?と疑ってしまいそうなほど。ほぼ全編リズム隊抜きで、これだけ弾ませて聴かせるのだから文句のつけようもない。一部の曲にアフロ・パーカッション、ハンド・クラップが加わるのみ。コード楽器は控え目なピアノくらい。
20年前の録音だがフィリップスはポピュラー部門でも古さを感じさせない。リバーブのきめ細かい処理の使い分けも曲毎に聴き取れる。

▼収録中3曲試聴可
https://youtu.be/iyfoBqbolCs

ガールズ・フロム・バイーア

perdonsistersブラジル人のコーラス・グループ、トリオ・エスペランサつながりで、こちらも大ベテラン姉妹、クアルテート・エン・シーも初めて聴きました。『Perdon My English』(1967)です。

第一黄金期に当たるアルバムらしい。渡米してワーナーからガールズ・フロム・バイーア名義で英語中心とした制作で、僕はイーディー・ゴーメのボッサ・ノーヴァのアルバムを思い出した。この泣き別れステレオによるリズム・セクションの振り方や電子オルガンの音色にニンマリ。若かりし頃のマルコス・ヴァーリ夫妻の渡米盤も思い出すね。

本場に較べるとアメリカのショービズ要素が表れたサウンドなのだろうが、英語曲も違和感無いし(「おお、スザンナ」がポップなサンバに)、ハーモニーをしっかり堪能できる楽しい内容だ。ちょうど今月下旬に国内廉価盤として新装リイシューされるらしい。

天晴、ムグルッサ

今月からウィンブルドンを見越してWOWOWに再加入し、錦織敗戦以降の全仏試合を視聴していた。
昨夜は女子シングルスと男子ダブルスの決勝だったのだが、セレナを破ったスペインのムグルッサ、素晴らしかった。あのダブル・フォルトを厭わないリスキーなセカンド・サーブ、そのダブル・フォルト、2セットで10本近くあっただろうか、みすみすもったいないと観ていてハラハラ。しかし、セレナと互角にラリーを打ちあえる彼女、果敢に深いボールを打ち続け、ここぞという時に、サイドラインに打ち込んで決めてみせた。
セレナも臀部の痛みを抱えていたとはいえ、要所でパワーを出していたので、本人も言い訳していなかったように不調が敗因では無かったと思う。元選手の解説者がよく「気持ちで負ける、あるいは勝つ」ということを言ってるが、技術と体力に裏打ちされた自信を本番で発揮する難しさ・大変さに一視聴者は感嘆するばかり。

その女子決勝で疲れて、あとの男子ダブルスは流し観だったのだが、ブライアン兄弟を倒し優勝したロペス組、フェリシアーノは相変わらずかっこいいね。またエレッセのウェアが今シーズンも似合うんだわ。

3枚のブラジル

Appleで聴いたブラジル音楽のアルバムを3枚ほど。(購入アルバムではありませんので、聴き込めてはいません。)

celsoセルソ・フォンセカの昨年の新作『Like Nice』(2015)。売れっ子プロデューサー兼SSWという彼については、かつてマルコス・ヴァーリとの共演アルバムを試聴したのが初体験だったと思う。本作は全編オーケストラ・アレンジによる自作ボッサ・ノーヴァが、ジョアン・ジルベルトを彷彿させ濃密で流麗。ただ、ヴォーカルの密度がやや薄いというか、少し高い音域になるとストリングスに負けてしまって、少し食い足りない。Appleでは聴けない過去のヒット作『Natural』では、ギターを基調として、ヴォーカルのバランスが良さそうなので、機会あれば聴いてみたい。

Discreta先日のホベルタ・サー繋がりで、彼女のプロデューサーであるロドリーゴ・カンペーロを検索したら、この娘に辿り着いた。アントニア・アヂネーのデビュー作『Discreta』(2005)。ホベルタ・サーのバッキングを務めていたそう。父はギタリスト、コンポーザーのマリオ・アヂネー。落ち着いた清涼感あるバッキングが気持ち良く、ヴォーカルの素直さではホベルタよりちょっと好きかな。ただ、少ない声量できれいに歌う若いシンガーにあまり関心が無いもので、アルバム後半くらいから気が逸れてしまう。B.G.M.としてなら納得。

DeBachAJobimこちらは大ベテランという姉妹ヴォーカル、トリオ・エスペランサの『De Bach A Jobim』(2010)。ジョビン以外にバッハ、ビートルズなど選曲。この録音で既に姉妹は60歳を越えているらしいが、誇張のない素朴でチャーミングな歌い口、一糸乱れぬハーモニーに感服。バックのアコーディオンやストリングス、打楽器が抑え気味なのもいい。これ以外に他のアルバムのラインナップがAppleに無いのが残念。もっと聴いてみたい。

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 シャケ/YASUHISA

Author: シャケ/YASUHISA
男性 昭和40年代生まれ

愛猫カオ(ロシアンブルー)と同居
常にマイブームがないと生きていけない

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