砂上の楼閣

以前から気になっていた映画監督のデヴィッド・フィンチャーと主演男優のケヴィン・スペイシーらが製作総指揮する米ドラマシリーズ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』をレンタルで鑑賞始めました。

kevin

本作、スポンサーの付かないネット配信による、BBCドラマのリメイクらしい。現在7話目の鑑賞終了。政治陰謀の物語で、大統領選挙に貢献し、国務長官の席を約束され裏切られた主人公議員が、次々周囲を陥れ、上のポストを狙っていくというもの。
時折、ケヴィンは演技中、カメラ目線に向き直り、口先で有権者を説得しつつも、腹の内を吐露する。

フィンチャー監督の映像は、いつも冷たい打ちっぱなしの部屋に閉じ込められたような感覚を覚える。が、人間ドラマとしては、それほど魅力を感じてこなかった。過去に『セブン』『ゲーム』『ファイト・クラブ』『パニック・ルーム』『ゾディアック』と観ているが、モンスター級のキャラクター造形が印象強く、それとの対立関係というドラマ構図が多く見受けられる。

監督が初めて手掛けたドラマ・シリーズとなる本作は、ケヴィン自身がまさに怪優で見ものだが、彼を取り巻く助演の存在が最初は希薄に感じられた。夫婦関係が独特で、クールで仮面夫婦のよう。だが、そこはシリーズものらしく徐々に見せ場を意識して作られているようで、夫婦が互いをいかに知りつくしているかなど、回を追う毎に過去を滲ませつつキャラに深みを与えている。共演者にロビン・ライト、ケイト・マーラなど。

好きなシーンが、主人公が贔屓のスペアリブの店に訪れ店の黒人主人と会話するところ。主人公の原点が垣間見えつつ不思議と温かい場所。焼肉は、やっぱり小汚い店が美味い。

アニーバーサリー・ライヴ

新作『Tint』について大貫妙子さんのインタビュー含む特集が、USENのサイトで読めます。
http://e.usen.com/special/399/

過去にWOWOWで観た『40周年アニバーサリーライヴ』(2015)を、この度Blu-rayで入手。
onuki

WOWOW視聴時は、音声出力をモニタースピーカーに繋いでいなかったので気づかなかったが、とても聴き易いミックス。以前のピュア・アコースティックのライヴDVDは、エフェクトをかけ過ぎないのは好感が持てたが、ウッドベースがよく出てるわりに、ヴォーカルが少々引っ込んでませんでした? その点、本作はバランス的に聴き良い。カラーだし。

以下、ランダムにメモ書き。
taeko・「色彩都市」は本当に素敵な曲。サビ前の1小節のG♭mのコードが効いてる。かっこいいワ。
・「ピーターラビット・・・」の歌唱など、完璧。高い音を膝を落として発声するなど、身体の意識がみてとれる。
・ライヴでの再現性を意図して作られたという『One Fine Day』からの選曲が僕は好き。レコードと同じだぁ、という感動と、ほんのちょっとの演奏ニュアンスの違いに新鮮さと、両方感じることが出来る。
・「横顔」は、弾んだ曲調だからもう半音キーを上げてもいいとも思うけど、歌詞内容からこれくらい落ち着いたほうがいいか。
・初期の都会をテーマにした楽曲はAORの感覚が強く、大貫さんの音楽のフォロー範囲の広さと、当時の早熟さに驚かされる。
・過去のアレンジャーの中では、僕は小林氏が一番苦手かな。彼がどうというより、'90年代の感覚が好みに合わないのかも。
・アンコで歌われる「突然の贈りもの」はフレーズ一つ一つが、見事に連なって美しいスタンダード。
・特典のリハーサル映像で新作にも収録されていない新曲が。これはいつCDに・・・?
・ポップスにパーカッションを入れると、ラテンの横揺れになっちゃうから、という今回のツインドラム導入の経緯。このあたりもサウンドに対する個性的なこだわりを感じるね。

彼女のリズムに対する意識は、新作『Tint』にも表れていることに気づく。こちらではリズム隊を一切入れずに、バンドネオンの独特のリズム感覚を歌の呼吸に取り入れ、これまでのピュア・アコースティックとポップス・バンド活動の実績から、さらに一歩踏み込んだ編成。上品ながら、いやはやチャレンジャーだね。

どうする?VHS

そういえば、昨日はカーリー・サイモンの誕生日だった。彼女のサイトには元夫であるジェイムス・テイラーの新作がリンクされている。彼が最近出演した番組の、音楽コント(ダンガリー・シャツを着た若い頃に本人が長髪カツラで扮しシーソーに乗った!https://youtu.be/Dn2PU2uUhbY)についてもツイートしてたね。
ジェイムスの新作については、僕は何回通りかフル試聴したのだけど、曲の良さがあまり解らなくて・・・。フォーク&カントリーはもちろん、R&Bもお手の物って感じだけど。安定したプロデュースとジャケのセンスは、リヴにも分けてほしい部分はある。まぁジェイムスの場合、すぐに廃盤になることは無いだろうから、いずれ余裕のある時にあらためて。

さて、最近DVDに買い替えたカーリーの『Live At Grand Central』、初出盤は1995年のVHS発売で、そちらもまだ手元に残している。というのも、DVDは恐らくブート盤で、映像・音質のクオリティはVHSと変わらないから文句は無いのだが、ジャケがモノクロに変わり半端なデザインが残念で、そのためにVHSを処分できないままでいた。

この際、スキャナーが入ったことだし、本記事に残して、処分してしまおう。いずれ公式リイシューでヴァージョン・アップされることを願って。
carly

裏ジャケ(拡大可)
simon

本作中、9曲が視聴できます
https://youtu.be/C4fTT6voask?list=PL5ACY0-EGYIQzQGSt8_-eMR0CvJjSVg3t

Cry, cry, cry

ダン・ペンのリリース情報をチェックしていた時、『ドゥ・ライト・マン』(1994)が、タワレコ限定でリイシューされているのを見つけてしまった。タワレコってオールド・ファンやマニアをくすぐるリイシュー企画をするよなぁ。各部門によほど精通している人がいるのだろう。
この名盤は、あと少しだけでも音質が上がればなぁ、とかねてから思っていただけに嬉しい。SHM-CD仕様、2011年最新マスター使用。僅かな差だが、'90年代盤特有のくすみが取れ、全体的に音の抜けが良くなり、太く、温かみが向上。

penn

以前は、輸入盤中古入手だったので、歌詞はろくに自分で訳することもせず、フィーリングだけで聴いていた。今回の国内盤買い替えで対訳を読むと、あらためてダンは友情に歌いかける人なんだと思った。男女間のラヴソングでさえ、どこか兄弟のようなフレンドリーな親しみを覚える。性急ではない大らかな人間性が節回しのそこここに表れているように感じる。

penn2 ■クライ・ライク・ア・マン(Dan Penn)

 (前略)もう責めるべき人は誰ひとり残っていない
 誰ひとり
 彼女には行かなくてはならない
 彼女なりの理由があったんだ
 おまえが隠してた感情
 おまえが与えてやれなかった愛
 そのせいで彼女はおまえの心に触れることが
 できなかったのさ
 心の中の城砦を取り壊して
 自分の目の涙に降伏するんだ
 なあ おまえは決して自由にはなれないよ
 男らしく泣いてしまわない限り(後略)

 ※タワレコ限定国内盤対訳より引用

https://youtu.be/xSB_zGU2BIE

ダン情報

Amazonでダン・ペン&スプーナー・オールダム『The Complete Duo Recordings』が7月31日8月7日発売予定となっています。

Amazon JPより
penn

かつての二人のライヴ・アルバム『Moments From This Theater』と、ジャケ・デザインが似通っているため、最初は新譜と気づきませんでした。同じレーベルから発売のようです。
それで収録内容は? 米国Amazonではまだアップもされていない。少なくともジャケに表示されてるように、2枚組でCD+DVDの内訳になっている。

これは、つまり『Moments From This Theater』をベースにしたコンプリート盤で、そのライヴ映像がDVD化されるのだろうか?
そこで、レーベルのサイトで詳細を調べました。http://www.propermusic.com/product-details/Dan-Penn-and-Spooner-Oldham-The-Complete-Duo-Recordings-Limited-Edition-CD-DVD-199079

かいつまんで読んだだけなので、各自ご確認いただきたいが、先に出たライヴ盤がアイルランドでの1998年録音だが、今回は2006年のロンドン録音との記述が見受けられる。だが、トラック・リストを見ると『Moments From This Theater』と全く同じ曲順であることから、CDのほうは前回と同仕様、DVDには、CD収録のライヴ映像版にボーナスとして最近映像追加収録とみた。
何かとダブリを持ってる僕だが、ダンのDVD発売はこれが初めての筈なので、やはり予約注文してしまった。

発売予告映像

虚空の狂騒

dolceフェリーニ監督の『甘い生活』(1960)を、レンタル鑑賞。監督作品はこれまで『道』しか観た事がありませんでした。作家を目指しつつ、取材記者としてスキャンダルを追う主人公マルチェロ(マルチェロ・マストロヤンニ)を通して、ローマの夜の退廃を描く。音楽はニーノ・ロータ。

これは・・・、当時の世相や表現主義を理解しないと無理なのか?と、乱痴気騒ぎのシークエンスに、観ていて挫けそうになった。が、マルチェロが親愛の念を寄せていた年上の友人作家の死が、長尺の終盤近くになって展開をもたらす。(本作に登場する主人公の友人の追っかけカメラマン、パパラッツォが、のちに複数形化したパパラッチの由来らしい。)

この出来事以降、白いスーツに身を包んだマルチェロの乱痴気騒ぎが加速し、夜中に忍び込んだ金持ちの家で勝手に繰り広げられるパーティで、女に馬乗りになり、鶏のマネをさせたり、既に作家も記者も結婚も棄てた自堕落ぶりが伝わってくる。
ほとんどストーリーの体を成していないようだが、「迷い」は生の証しそのものであり、あえてストーリー仕立てを拒絶する手法をとっているかのようで、それは「人とは何か」という冷徹な問いかけの視線と紙一重のように感じられる。

パーティの果てに海辺に打ち上げられた大魚のグロテスクな眼。そしてタイプライターに向き合った頃に出会った、聖堂の絵画のような少女との再会。少女は遠目に何か叫んで来るが、マルチェロには聴こえない。そこには大切な示唆が含まれていたように思えてならない。しかしマルチェロは、そのままパーティ仲間達と共に海辺を引き返すのだった。

アニバーサリー・ブック

大貫さんの大阪ビルボード公演が9月に追加になった。これは40周年ライヴのメンバーによるもので、去年観逃したから行こうかと思う。出来ればサンケイのブリーゼなどでフルコンサートを希望したいのだけど。ビルボードはシングル席が窮屈で、食べ物の匂いが色々混ざってくるのが苦手。ライヴ・スペースって結構埃立つと思うけどね。

遅まきながら、美品中古入手しました。
onuki
本から音楽が聴こえる訳じゃなし、と購入を見送っていたのですが、『Tint』が素晴らしく、彼女への想いが再燃してゲット。WOWOWで観たきりだったアニバーサリー・ライヴBlu-rayも買う事に決めた。

ファンといっても自分の場合、2000年以前のアルバムはほとんど持っていない。2枚組ベストとオリジナルでは『プリッシマ』だけ。大学時代に、「彼と彼女のソネット」をきっかけに『スライス・オブ・ライフ』を買ったのが初めてだったが、電気楽器が似合わない印象を持ち、売り飛ばしてしまったのだった。それから約20年後、奇しくも再び「彼と彼女のソネット」のピュア・アコースティック版を、偶然タワレコで試聴してから、こんなに惚れ込んでしまうとは。

このアニバーサリー本で、教授との対談など記述を読むと、やはり自分が初期アルバムをあまり好んで聴く気になれない理由を再認識する。教授は歌詞に興味が無く、元々、歌を聴かないでアレンジしていたという逸話に納得。彼女の柔らかいヴォーカルに何故このような硬質で過剰なサウンドが施されるのか、時流とはいえ首を傾げてしまうものもあるのだ(聴き手としての自分に、テクノやポップスの感覚が欠如しているのがそもそもだが)。
大貫さんのヴォーカルも声質は柔らかいとはいえ、歌い方はまだ硬かった。いつだったか、過去の彼女がパーソナリティを務めるFM番組で、達郎さんからのメッセージが録音で流れ、「最近のター坊は、言葉を切って歌い過ぎる」と指摘され、大貫さんがちょっとムッとした場面があった憶えがあるのだけど、近年はうまく納豆のように言葉が文節単位で聴きとれる歌い口に変貌している。

これらの軌跡は、彼女の進化の証であり、彼女が今も好んで取り上げる過去曲は、より洗練されていて、楽器同士の呼吸が伝わるようで、活きた音楽の実感がある。

taeko

ケンプの三重奏

タワレコのリイシュー企画から、ヴィルヘルム・ケンプのアイテムを幾つか購入。その一つが、こちらの『ベートーヴェン三重奏曲集』。

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▲左からケンプ(ピアノ)、ヘンリク・シェリング(ヴァイオリン)、ピエール・フルニエ(チェロ)

大貫さんの新作と編成があまり変わらないせいか、違和感無いですね。これは買い替えではなく、初入手なのだが、1969~70年録音と、ケンプの中でも新しい類なので、とても安定した質感だ。
弦楽器を前面に配置し、ピアノは背景に位置したバランスが、サロン空間も含んで豊かに響く。ポピュラーと違うのは、こうした生々しい音場がミックスダウンの作為も無く、伝わることだ。

まだ曲ごとの個性を掴むほど聴いてはいないが、4枚もえんえん聴き続けるのが楽しい。義務教育の音楽授業では、よく交響曲やピアノソナタを勧められがちだが、室内楽レベルの緊密感をもっと教えてあげたほうが良いのじゃないだろうか。

なお、一部、第4番「街の歌」のみ、ヴァイオリンからクラリネット(演奏はカール・ライスター)に交替。つくづくベートーヴェンは働き者だったんだなぁ。どの編成もお手の物。人間味を遺した職人芸だ。

https://youtu.be/65STI9Kex9A(約10分)

聴き合いの"Tint"(2)

tint

小松亮太さんのブログにて、大貫妙子さんとの新作『Tint』について、セルフ解説されています。
http://ryotakomatsu.eplus2.jp/article/420391507.html

入手してから、このアルバムばかり聴いてる。バンドネオンの呼吸感が心地良い。数年前、大フィルの新春コンサートに出かけて、バンドネオンがオケ共演してたのを聴いたことがあるけど、その時の演奏者は三浦一馬さんという人で、今調べたところ、小松さんに師事していたらしい。オケ共演になると、バンドネオンのみマイクで拾うので、ナマ音の感触が低減するのが難だった。音量の性質上、バンドネオンは弦カルくらいの規模のアンサンブルのほうが合ってるように思いますね。

(3)「Hiver」は、最後のほうで急き込む感じが、他のヴァージョンより、自然に出てる。
これは確かにドンカマ(リズムボックス)では、表現できない演奏だ。リズム楽器の使用は、唯一(9)「ホテル」のみ。これはボッサ・ノーヴァ調でシンコペーションのリズムなので、僅かな音量でパーカッションが入っている。
大貫さんのラジオ談によると、2000年頃からドンカマを使わなくなってきたそうで、僕自身、彼女のアルバムを聴くようになったのは、まさにこのころから。単純に「せーの!」で演奏する潔さから、聴き手にも気持ち良さが伝わるんじゃないだろうか。

先行シングル(6)「愛しきあなたへ」は、アルバム収録で初めて聴いたのだけど、これは多分、亡くなられた親御さんのことを歌っているのですね? 聴き終わると暖かい何かに包まれたような充足感が得られる。ストリングスの入り方やバンドネオンの味付けが、絶妙です。
それから録音の良さ、芸森スタジオのシンとした引き締まるような空気が伝わるようだ。素人としては、スタジオなんか何処も同じじゃないの?と、つい思ってしまうのだが、本作を聴くと、彼女がこのスタジオを気に入ってる理由が分かる気がする。

買いそびれたデビュー40周年ライヴビデオも欲しくなってきたなぁ。本作を引っさげたツアー、大阪はやはりビルボードなんですね。オーチャード行きたいよなぁ。

ニーナ!

友達の店に寄ったら、ジュリーがかかっていて、思わず懐かしい!と騒いでいると、2枚組CDを貸してくれて、持って帰ってきた。
沢田研二『Royal Straight Flush 1971-1979』(1997)です。

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シングル集。前半は加瀬邦彦さんの作曲が多い。後半は阿久悠さんと大野克夫さんのコンビがレギュラー。
久々に聴いて、「これ、誰の作曲?」と思わず問うたのが「追憶」。へぇ、加瀬さんの曲だったんだ。マイナーからメジャーへの転調が美しい。作詞は安井かずみさん。「危険なふたり」もこのコンビだった。

大野さんのほうは、日本語のニュアンスを活かしたドラマティックな曲想が印象強いが、僕は加瀬さんの、海外の言葉を付けても通じそうな美メロが好きだぁ。加瀬さん参加全曲のコンピレーション、出ないかな?
オー! ニーナ! タイトルが「ニーナ!」じゃなく「追憶」となってるのも渋くてイイ。最後のほうのジュリーのトドメの甘い囁きもgood!

https://youtu.be/xQrxWJGHyNA

聴き合いの"Tint"

入荷遅れでヤキモキしていた、大貫妙子さん&小松亮太さんの共同アルバム『Tint』が、到着。

onuki

『UTAU』で坂本教授と"果し合い"をした大貫さんの自信のほどが、このアルバムに表れているようだ。この度のサシの相手はバンドネオン。
バンドネオンは、ギジャッ・ギジャッというエッジのきいたリズムが、アコーディオンより重心がある感じ。タンゴダンスのように、歌い手は、感情露わな歌い口が合うイメージがあった。

オープニングのインストに続く(2)「Tango」と(3)「Hiver」が、アルバムの世界へ導く肝でしょう。どちらも過去曲からの選曲だが、やはりマイナー・キーでエッジがある。「Hiver」は、従来がカフェに引き籠って温まるような印象だったのに較べ、窓辺の結露に触れるような、ある意味、リアルな感触。

tintちょうど、伊藤銀次さんがパーソナリティを務めるラジオ番組で、ゲストに大貫さんが出演していたので、本作の経緯について興味深く聴いた。http://www.110107.com/mob/news/diarKijiShw.php?site=OTONANO&ima=1517&id=164&ct=popfilereturns
小松さんの「Tango」のリアレンジは作曲者の教授からもお墨付き。「でも、コードが変わっちゃってるね」と漏らしていたそうで、可笑しい。そりゃ、作曲者なら気づくもんねぇ。(10)「突然の贈りもの」も、随分変わってる。

バンドネオンのプレイの感覚の特徴は、僕の推測では、多分にスケール(音階)を重視した要素があるのでは、と思う。特に上行しながらクレッシェンドしていくような感情。そこに緩急を加え、コード進行は、その上下行に沿う形をとる、といったイメージ。

ラジオ談では、現地の歌手などは、小松さんの伴奏に合わせるというより、むしろガンガン歌いまくるらしい。大貫さんの美点は、"聴き合い"が可能な事だ。ピュア・アコースティックしかり、バンドしかり。音楽の把握力があるから、どんなコラボでも彼女はあるがままに見える。それって、本来とても難しい筈なのだ。

Tint 大貫妙子&小松亮太 iTunes プレビュー
https://itunes.apple.com/jp/album/tint/id1001082011

コリン新作、来たれり

日本公開は9月予定ですが、コリン・ファース、サミュエル・L・ジャクソン、マイケル・ケインら主演のスパイ・アクション作品『キングスマン』(原題『Kingsman: The Secret Service 』)が、既に各国で大ヒットしているそうです。原作は『キック・アス』のマーク・ミラー(漫画家)、監督は『キック・アス』に続きマシュー・ボーン。

以下はコリン演じる殺戮シーン。さすが、スーツ姿がキマっています。彼は、ここしばらく拍子抜けするような作品が続いただけに楽しみだ。けど一体これは、どういうシーンなの?と知りたくなって、町山さんのラジオおこしを聴くと、白人至上主義でバリバリ偏見持ちで、ゲイ嫌いの信者たちが集う教会に乗り込んだものらしい。BGMは白人に人気だったレーナード・スキナード。
既に続編も製作予定だとか。

▼予告篇では無く、まるまる1シーンなので公開楽しみな方はスルーで

JT新作情報(3)

ジェイムス・テイラーの今月発売予定の新作『ビフォア・ディス・ワールド』の全曲試聴が以下URLでできます。
http://www.nytimes.com/interactive/arts/music/pressplay.html?artist=James Taylor&album=Before This World

一通り聴いてみたところ、前作オリジナル『オクトーバー・ロード』がヴァラエティに富んだ、様々なタイプの楽曲群だったため、今作は、フォーキーなプロデュースとは理解しつつ、比較的こぢんまりとした印象を持ちました。しばらく試聴してから購入決定しようと思います。

欲望の相似

『複製された男』(2013)をWOWOW放送にて中座しつつ観た。『プリズナーズ』に続く、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督、ジェイク・ギレンホール主演。

jake

やはりこの監督の映像表現は苦手だな。この"ムード押し"的なフィルター多用、ジャンプ・カットの類は、どこかミッキー・ローク主演の『エンゼル・ハート』を彷彿とさせる。
まず、似ている男を探し出してしまう事に、どうしてそんなに怯えるのか、重いトーンに不信を抱く。そこへ例のギレンホールの優秀な院生のメソッドのような演技が鼻に付く。彼のナイーヴなルックスに、いかにもアメリカンな演技法がどうも合わない感じで好かない。

瓜二つの男が暮らしを取り替えることによって、スリラーが始まるが、この経過も不自然だ。結局、一方の恋人は指輪を外した痕でニセモノと気づくが、もう一方の妻は・・・。
唖然としたエンディングだった。これは実写より文学で楽しむほうが受け入れられるかもしれない(原作はもちろん未読)。どうやって双方の女にバレるんだろうといった、現実的で下世話な描写のほうを実写では期待してしまうのだ。

とはいっても、こうして書きながら気づくのは、ああした荒唐無稽な筋書も、二人の男に内在する欲望だけは、なぜか極端に一致し、ダイレクトな行動に素早く移れるのが興味深い。自己の欠如を満たす行為について、なんらか考えさせるものはあった。

ワウリンカ、全仏優勝

WOWOWに加入した途端、錦織選手は負けてしまったが、他に質の高い試合が幾つも観られた。女子決勝もセレナ相手にサファロバの強いメンタルが伝わってきた。

そして、ゆうべの男子決勝戦ジョコビッチ対ワウリンカ(バブリンカ)。好不調の波が激しいワウリンカを、一頃応援していたけど、彼は去年の全豪優勝がキャリアのピークだったかな、と思い始めていた。ところがNO.1シードのジョコビッチは、生涯グランドスラム達成を目前に、守りを意識したのか、終始ワウリンカの強打を警戒し過ぎたためか、普段の手堅いクレバーなプレーは見せるものの、攻撃の姿勢がやや後手に回ったようだった。

よく、「自分のテニスをやる」と、選手たちは自身に課しているが、この試合のワウリンカは一貫したプレーだった。得意のバックハンドのダウンザラインは、戦略的に序盤は封印していたか?という程度。フラストレーションから自滅しがちな印象のあった彼は、ジョコから続くドロップショットへのリターンミスに苛立つ場面はあったものの、ほとんど冷静で、0-40やデュースからの追い上げのメンタルの強さには、目を瞠った。

素人考えだけど、錦織やフェデラーのような"柔らかいテニス"より、ワウリンカのような強打タイプのほうが、強風の日でもプレーが安定するのかな、と。でもいろんな側面があって、総合的な強味が必要ですから、やはりテニスは難しいですね。

ケンプのリスト(SACD)

なんとタワレコから今度はヴィルヘルム・ケンプのカタログが限定リイシューされるそうです。
http://tower.jp/article/feature_item/2015/05/20/1101
これらはSACDでは無いが、少しでも良い音質で聴きたいので、きっと手を出すだろうなぁ。メニューインとの共演盤以外は全部買うかも。特に第2回発売のベートーヴェン・ピアナソナタ全集は、当ブログで何年も前に最新マスターが欲しいと言ってたくらいで、ようやく叶うのが嬉しい。ウチのCD棚が意外と満杯にならないのは、こうした買い替えばっかりやってるからですね。

kempff

そして、こちらが先月入手していたPENTATONEのグラモフォン・リマスター・シリーズからリイシューされたケンプの『リスト:『巡礼の年』第2年『イタリア』より、2つの伝説』です。録音は晩年期の1974年。
たぶん、これがケンプのSACD化の第一号だと思う。他に国内からライヴ発掘音源のSACDが出てるが、バックハウスとのカップリングで、正真正銘のレコード用録音としては、本盤が今のところ唯一でしょう。

ただリストは、自分的には余り馴染みが無い。「ラ・カンパネラ」のオクターブ以上を駆使した超絶技巧曲に、指がヘロヘロになってただちに嫌気がさした経験から、どうも敬遠しがちだった。

グラモフォンのピアノソロ録音は、サロンの空気を吸収した、遠景的な音像。数年前、ピレシュ(ピリス)の録音を聴いた時、会社の録音ポリシーは基本的に変わらないのだなぁ、と思ったものだった。

ケンプの第一音から、深遠な落ち着きに魅かれる。この柔らかさ、意外なフレーズ間の、間の取り方。どれほどの理解があれば、これほどの慈しみが表せるのだろう。

ロマン派の中の印象派という呼び方は変か。水の都を幻想すると、つい近年の水没化がまとわりついてしまうのだが。

https://youtu.be/U9x2kVzOH7Q

ジョニの映像作品

発売当時、入手していたジョニ・ミッチェルのライヴDVD『ジョニ・ミッチェルの肖像』(1998)。
joni

『シャドウズ・アンド・ライト』に続く、二番目のライヴ映像作品ですね。『シャドウズ・アンド・ライト』は、DVDリイシューされた際、入手したんだけど、映像が思ったより垢抜けない印象で、早々に手放してしまった。今ならCD盤で買い直してもいいかなと思う。

本作のほうは、アルバム『テイミング・ザ・タイガー』発表後のライヴにあたる。ドーム型のスタジオに、ステージを取り囲むように、色とりどりのソファが並べられ、壁にはジョニの絵画作品が並べてある。
今の感覚で観直すと、こんな解像度の低い映像だったとは。買ったときには、最新映像の手ごたえを感じたのにねぇ。現在、海外盤のみBlu-rayリイシューされているようです。

jonilive本ライヴでジョニは恐らく『テイミング・ザ・タイガー』と同じギターを使用していると思うが、このギターの音色が、未だに僕は好きになれないようだ。暖色系なんだけど、ペラペラしているというか。
そして、彼女のギター演奏、やはり変則チューニングとみえて、どれも見た事もないコード押さえのフォームばかり。この件は、過去のレコード・コレクターズ増刊『シンガー・ソングライター』特集号にて、和久井光司氏の興味深い記事があった。
【ジョニのオープンチューニングは、バーで押さえるコード・フォームを嫌うことから始まったものだろう】。だが、本ライヴ映像でのジョニは、既にバレー・コードを軽々と弾きこなしている。
【彼女はおそらく、早い時期にチューニングを変える手法に気づいているし、我流でどんどん変則的なそれを発明していったのだ。その結果、彼女が好む、ジャズっぽい、コンテンポラリーなコードを開放弦で作っておいてから、メロディを決めていく作曲法が生まれたのである。】(レコード・コレクターズ2010年5月増刊号より引用)

開放弦を重用した分数コードに新味を感じつつ、ライヴ終盤近くでハンド・マイクで歌われる他人曲のカヴァーに、緊張が解けるようなリラックス感を得られるのも正直なところ。フランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズの「ホワイ・ドゥ・フールズ・フォール・イン・ラヴ」などイキイキとダンスする彼女に、少女時代のバックグラウンドを窺わせる。

この汽車のように

トラッド大全

ジョニのコード進行を把握しようと耳を傾けていると、ちょっと頭の中がウニョ~となってきたので、休憩に無伴奏の歌集を流しました。

trad

英国フォークの老舗レーベル、Topic Recordsから発売された『The Voice of the People』(1998)。レーベルが所有する音源とプライベート音源を網羅した、全20巻におよぶ、英国とアイルランド、ウェールズの伝統音楽集。画像は第10巻「Who's that at my bed window?」。

各巻、5,60ページにも及ぶ詳細解説と歌詞掲載のブックレット付きで、CDケースが異様に分厚い。70年以上の歴史を持つというこのレーベルは、現アーティストではジューン・テイバー、マーティン・カーシー、リンダ・トンプソンなどベテランを抱える。

トラッドをそこそこ聴いてきたつもりでも、本巻の全25曲中、バンジョーで歌われるラスト「She Moved Through The Fair」(1957あるいは1958年録音)しか自分は知らなかった。トラッドの中でも、ご詠歌か何かみたいな、厳かなフレーズ。マーガレット・バリーの歌い上げ方が、先に聴いていたシネイド・オコナーに近い感触。
https://youtu.be/2DZXRQLN3bs

■She Moved Through The Fair

おれにはむかし、恋人がおって、まっとうに愛しておったのよ
どのくらい愛しておったのかなんて、口では言えないほどさ
娘のふた親は狡さが足りないとて、おれを疎んじたのさ
さればわが歓びに別れを告げよう、愛しき人にはもう会えないゆえ

娘はおれから引き離され、雇用市場にかけられた
仲買人は手をたたき、賃貸しだよとの叫びが空気を震わす
娘の周りに日の光が踊り、弾けながらささやきかける
わたしたちの婚礼はもうすぐよ

(中略)

おれはゆうべ夢を見たよ、愛しいあの娘が入ってくるのを
娘の身のこなしはとても滑らかで、足音もたたなかった
娘は俺のところまで近寄ると、こう言ったのさ
あたしたちの婚礼の日は、もうすぐよ
(メアリー・ブラック『コレクティッド』キング国内盤より訳詞引用)

●他アーティストによる歌唱
メアリー・ブラック https://youtu.be/wBpuikqf9tA
ヴァン・モリソン https://youtu.be/bV7ZFI0CDBw
アート・ガーファンクル https://youtu.be/Dd27k4mVc1U
シネイド・オコナー(Live) https://youtu.be/8DQnS18EeWM

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 シャケ/YASUHISA

Author: シャケ/YASUHISA
男性 昭和40年代生まれ

愛猫カオ(ロシアンブルー)と同居
常にマイブームがないと生きていけない

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