この静謐に熱狂(2)

先日のジューン・テイバー新作『Quercus』記事で紹介した試聴動画が早々に削除されていましたので、かわって他の曲のサンプルを扱った公式ページのリンクを紹介。

「Lassie Lie Near Me」は最初にコニー・ドーヴァーの歌唱で知りました。
今回のテイバーの新作では、サックスのノイズが生々しくて気持ちいいですね。

http://player.ecmrecords.com/quercus/music
tabor

この静謐に熱狂

音楽ライターの松山晋也氏のTweetにより、ジューン・テイバーの新作情報入手。
テイバーの情報については、Topic Recordsのサイトをチェックしてまだかまだかと期待していたら、まさかのジャズ専門レーベルECMより発表。
tabor
June Tabor, Iain Ballamy, Huw Warrenの3人。ヴォーカル+サックス+ピアノ。ヒュー・ウォーレンは、テイバーのレギュラー・プレイヤー。
今作の経緯を知りたいけれど、なかなかインタビュー記事が日本の雑誌に載ることもないだろうな。'80年代のMM誌でさえ、単に地味だとかいったぞんざいな評価しか出来ていなかったし。

彼女、65歳ですね。特に近年は、新作の度に驚かされる。まだまだやってくれますよ。
Amazon.UKが微妙に安かったので、現在取り寄せ中。

あなたが最後に父上に会ったのは?

日本未公開だった'07年イギリス映画『And When Did You Last See Your Father?』をUK盤を取り寄せて鑑賞しました。ジム・ブロードベント、コリン・ファースが父子役を演じる。ブロードベントは『ブリジット・ジョーンズの日記』でブリジットの父役を演じた人ですね。

colin

英語字幕の鑑賞は2本目。少し慣れてきたのか、字幕と映像と両方見ながら、おおよそながらも理解できました。絵付き読み物みたいなものです。
リスニングは駄目。幼稚園から英会話をやってた外資系の人にコツを聞くと、「ひたすら慣れですね」だって。

性格の180度違う父と息子。作家として成功した息子が、医者だった父の末期ガンを知り、妻子をロンドンに残して、単身、母と妹の待つ田舎の実家を訪れる。
その間、子供時代の記憶が甦る。読書ばかりしている自分を連れ出した、豪放な父とのドライヴ旅行。父の女性関係の疑い。性の目覚めにともなって、父に対抗心を持ち始めた頃…。

事実に基づいた物語だそうだが、この父子関係と鑑賞者との幸福度の違いを比較するのは無意味だ。家族の形は、人それぞれ違うもので、この抜き差しならなさに何らかの優しいヒントが貰えたらいい。

随所に現れる鏡の演出が印象的。英国の田舎風景が美しい。ラストのコリン・ファースの演技に貰い泣きしてしまった。

ミスティック・リップスティック

久しぶりに手持ちのアイリッシュCDを聴き返していました。
最近のアイルランドの音楽シーンがどうなってるのか、もう分からなくなってしまいました。今思えば三大歌姫(メアリー、ドロレス、モーラ)が出揃った時代にリアルタイムに巡り会えて幸せでした。

maura
これは、アイリッシュ・コンピCDの中でも最も気に入っているジミー・マッカーシーのトリビュート集。本人歌唱も入っています。クリスティ・ムーアだけどうしても好きになれないのですが(本国では大御所だけど)、色んな人に挟まれて聴く分にはOK。

モーラ・オコンネル歌唱の「Mystic lipstick」にジーンときます。ジミー・マッカーシーって本当に良い曲を書きます。モーラはもう1曲、ジェイムス・テイラーと「Love Devine」をデュエットしているが、これも沁みる。

ラ・メール

今年はちょっとしたサントラの年になりそう。
『裏切りのサーカス』(原題『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』)のサントラと、あわせて原作小説も購入。
colin

サントラは、映画鑑賞後ののぼせた勢いで、つい買ってしまうパンフレットと同様、思い出として、以降まったく聴かなくなる可能性もあります。が、良い映画はサントラも良い、良いサントラは映画も良いことが多い。

この映画、2度見以降が面白い。3度目にして、二人の諜報部員が立ち話しているシーンで、(何でこんな構図で撮ってるんだろう)と思ってたら、画面の片側の茂みの陰で盗み聞きしている男の皮靴が黒光りしているのを見つけて、ゾッ。

密やかなジャズのテイストに、ひたひたと迫るサスペンスフルな弦の弓の反復。今日のような鬱陶しい天候に、ロンドンの湿り気が重なります。作曲・コンダクターはアルベルト・イグレシアス。
でも、ついでに映画のクライマックスで流れるフリオ・イグレシアスの「ラ・メール」も収録してほしかったなぁ。これ、僕がリアルタイムに聴いた頃より歌声が若い。

小説のほうは、これから読みますが分厚い。思い出のまま積ん読にならぬよう、読了に励みますワ。

Cuddlebug

それにしても、自分大好きな人って多い。僕は自分を大事にはするけど、大好きではないですね。

cs2

しばらくカーリーを聴いていなかったので、ゆうべ寝しなに初期の、姉ルーシーとのデュオ集を流してみた。
あまり聴き込んでいなかったので、あれ、こんな洒落た曲あったんだ、と思わず起き上がってトラック名をチェックしました。

私訳「シングルマン」(8)

George's Waltz (1) by Shigeru Umebayashi on Grooveshark

『シングルマン』の音楽担当は、アベエル・コジェニオウスキと梅林茂。特に追加音楽担当の梅林氏のトラックは自分のお気に入り。かつて『夢二』という映画も担当されたそうですが、この「ジョージのワルツ」は、どこかしら「宵待草」に通ずるような物悲しいテイストが感じられます。

このシーンは映画を観ていない人には解りづらいかもしれません。最後の出勤日の朝、ジョージがトイレの窓から向かいの若い一家の様子を覗き見るもの。トイレのシーンでこの曲を起用するところに意外性があります。
アメリカに理想を求めてやってきた英国人のジョージにとって、一家は彼を失望させる保守の象徴であったのかもしれません。

colin
ジョージの家-バスルーム

ジョージはトイレに座って本を読んでいる。
外からは絶えず金属を叩く音がする。先刻から聴こえていた音である。ジョージはこのイライラする音を無視しようとしたが、集中しかねて本を閉じた。彼は通りを見やる。その窓はジョージがトイレから外を見るために位置しており、外からは彼の頭だけ窺う事ができる。

ストランク家
(カメラは一家をとらえるが、彼らの会話は聴こえない。)

ストランク家はきれいな家で、1962年頃のいかにも伝統的なアメリカン・ドリームを体現した新しい様式である。
ジェニファー・ストランク、8歳、ブロンドのアメリカ少女、体重計を金づちで叩き壊している。彼女はピンクのリボンをしたペルシャ猫をしっかり手に抱いている。彼女はギンガム・チェックの服を着ており、金づちで変わらず体重計を叩きながら、うんざりするテレビ・コマーシャルの歌を歌い続ける。
ミセス・ストランク、32歳、玄関に現れる。彼女は郊外に住む典型的な良妻賢母である。彼女はいつも穏やかで落ち着いているが、この日ははっきりと娘を叱った。ジェニファーは自分の母を無視して、ますます乱暴に金づちを振り下ろす。
その間、ジェニファーの兄、9歳、トムが金属探知機で芝生を梳いていおり、クリストファー、5歳、が園芸用シャベルで芝生を激しく掘り起こしている。金属探知機は突然、キーンという音で何かを探し当てる。
ジェニファーは猫を落として兄弟が掘り起こしている場所へと駆ける。
庭の芝生と花壇は彼らによって、犬が掘り起こしたような有様になった。
3人の子供達は母親に向かって叫び出した。ミセス・ストランクは急いでその穴を見に駆け付けた。金属探知器が再び鳴り出し、彼女までも喜び声を上げて穴掘りにいそしむ。

(カメラは金貨を掘り当てる子供達を様々な角度からクローズアップ。カメラはストランク一家を覗くジョージに切り替わる。)

ミスター・ストランク、35歳、若い会社役員で、仕立ての良いスーツに折鞄を持っている。家族の騒動の中、出勤するところだ。
妻は慌てて夫に駆け寄るが、荒らした芝生と花壇に不満な彼をなだめられない。

(花壇を飛ぶ蝶々を捕まえるクリストファーのショット。)

ストランク氏は妻の愛情を払いのけるように何かを主張し続けている。

(蝶々を握り潰すクリストファーのショット。)

ミセス・ストランクは車へと向かう夫に進み出てキスをする。
彼女は叩き壊された体重計をゴミ回収缶に捨てながら、一部始終を見つめていたジョージに気が付き通り越しに目を合わせる。彼女が手を振ってきた。

ジョージの家-バスルーム

きまりの悪い思いをして、ジョージはしゃがんで隠れた。その時、電話が再び鳴った。
彼はしばらくそのまま座っていた。ため息を付き、ついに鳴り止まない電話に立ち上がる。彼はトイレからスボンを足首まで下ろしたまま引き摺っている。

「アルゴ」「007」

新作2本レンタルしました。親知らずを初めて抜いてもらって、麻酔切れの疼きを紛らすためにドンパチ系を選択。

・アルゴ
アルゴ

ご存知アカデミー受賞作。意外と小粒な印象でした。事実に基づいているため余計な脚色は避けた?
題材についての感想は特に無い代わりに、ベン・アフレックって本当に映画を愛してるんだなぁと感じました。
主人公が一晩、ホテルで思案するシーンで、アイリッシュ系の音楽が鳴っていました。誠実さを表す効果あり。
奇抜なアイデアによる脱出劇だが、ペルシャ語で交渉出来る人が一人だけだったり、絵コンテを去り際に渡してしまっていいのか?と、ツメの甘さにハラハラ。
特典映像に実在人物で構成されたインタビューが入っているが、本編ほどの長さに興ざめしてしまい、途中で止め、返却しました。

・007/スカイフォール
007

ダニエル・クレイグのボンドは1作目を観て好印象でした。今作の主題歌賞の曲、初めは良さが解らなかったけど、オープニング映像と合わせて聴けば、ぐっと色気が迫ってきました。
映像がとてもきれい。諜報部の相関関係の説明に力点を置かなくても、重厚感を感じさせるのはシリーズならではの得してる部分。アクションだけ集中して観ればいい。
ダニエルのスーツはトム・フォードだっけ。シルエットが綺麗。ハーフ・コートもおしゃれでアレ欲しい。
ミュージック・ビデオみたいな感覚で手元に置いておきたいほどだが、同じスパイものなら物語性で勝っている先日の『裏切りのサーカス』が、自分にはゴージャス。

トランペット&ヴェルヴェット

ジョー・スタッフォードの4枚組廉価CDを購入しました。
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ドリスと同じく、ジョーのCDもコンピレーションが多いのだけど、『シングルマン』サントラの影響で、「ブルー・ムーン」が収録されているこのアイテムを選択。
かつて、ジョーのCDは'60年代の再録ベスト盤を持っていたのですが、いつのまにか手放してしまっていたようです。

こちらは1枚につき、800円くらい。先日買ったドリスの4CDはアルバム間の音量や質感にややギャップがありましたが、こちらは安定しています(メーカーは異なる)。
二人とも同時代に活躍しているので、レパートリーが重なります。ジョーの「ブルー・ムーン」、こちらはヴァージョン違いだった。結果的にサントラとダブらなかったから思いがけず得した事になるのだろうか。

トランペット・ヴォイス、またはヴェルヴェット・ヴォイスといわれたジョー、確かにブレスが長く滑らかで、彼女が歌い出した瞬間から独特の空間が生まれるようです。
ドリスもジョーも順を追って聴くと、初期中の初期が軽やかで楽しい。やはりパイド・パイパーズ時代から始まるCD1が好きですね。おどけた歌い方など、初期ならではの意外な表情もある。流行の変遷なのだろうが、特に戦後直後の演奏は、単なるブームとは違った活気に溢れているように感じる。残念ながらここではパイド・パイパーズとの曲は2曲のみ。おやぢさんお薦めの盤は既に廃盤のようです。

Easy Virtue

ジェシカ・ビール、コリン・ファース、クリスティン・スコット・トーマス主演の'09年イギリス映画『Easy Virtue』を観ました(少々ネタバレあり、国内で観た人どれくらいいるやら)。
これは日本未公開作、UK盤を取り寄せたもの(新品で800円程度)で、英語字幕に囚われていると演技を観る余裕すらなく、演技を観ていると字幕がどんどん流れて飛んでゆく…。
colin

ジェシカ・ビールは先日の『ヒッチコック』にも出演していましたね。本作ではドレス姿がきれいです。本作、ヒッチコックのイギリス時代に無声映画『ふしだらな女』として撮られていたそうです。
戦後、アメリカ人の女性レーサーがイギリスのアッパーミドル階級の家に嫁いで、姑を筆頭に葛藤が生まれるというもの。戦争帰りで隠遁生活を送る舅(コリン・ファース)が唯一の理解者で、ラストは意外な男女の組み合わせに…。

リスニング成功率はとても低いものですが(笑)、複雑なストーリーではないので、俳優の感情だけでも大体分かります。山場はネット辞書などせっせと引きました。
この作品を現代において映像化する意図はなんなのでしょう。特典の監督インタビューのほうは英語字幕が無いんですよね。
単純なアメリカVSイギリスという価値観の構図にしても、アメリカ女性演じるジェシカは突っ張り過ぎて、先方と相容れないのも仕方ないかと。しかし、先方の娘達も奥ゆかしそうで、結果ジェシカの前夫とのスキャンダルをわざわざアメリカから取り寄せるなど執拗。コメディ&ミュージカル調で進みながら、ラストでジェシカは完全に孤立してしまいます。

一通り観てしまうと、息子役がドラマの中でほとんど機能していないだけに、繰り返し観る価値をあまり感じない(コリンとジェシカがタンゴを踊るシーンでの、息子の視線は興味深かったが)。そのぶんコリン・ファースがおいしい所をかっさらってくれますが。

単純に、生きたいように生きようという解釈に至りました。けれどあのラストは、あのままうまくいくのでしょうか?

特異な職場の普遍性

レンタルで一度観賞済みだった『裏切りのサーカス』(日本公開'12年)のBlu-rayコレクターズ・エディションを購入しました。ほんとは初回ジャケで欲しかったけど、作品の存在を知るのが遅過ぎました。
colin

これもコリン・ファース目当て。この1ヶ月間でファースの出演作は可能な限り観たが、やはり『シングルマン』以降、俄然良くなっているように思う。元々演技派の人だが、若い時は特徴的過ぎなかった容貌が、50前後から渋味を伴って、燻銀タイプの役者に躍り出てきた感じ。英語圏では押しも押されぬ大スター、日本での人気ももっと出て、未公開作の日本盤も発売してほしい。

こんなスパイ映画は初めて。007のような秘密兵器もアクションもない。東西冷戦下のイギリス諜報機関、MI6(通称:サーカス)を舞台に、引退に追い込まれた主人公が、内部スパイ"もぐら"を探し当てるというもの。原作者(ジョン・ル・カレ)が実際に諜報部出身で、本作にも協力、カメオ出演しています。

初見時は政治ドラマを複雑に感じたが、これって、勤め人なら誰でも共感できる組織の日常であって、派閥のキナ臭さや、私情、互いの疑心暗鬼など、人間臭い共通項を幾つも見出すことができる。
抑えたセリフで相関関係を描写しているので、"空気"を読みとらないといけない。
最も恐く感じたシーンは、東側の拷問シーン。視覚的には全然怖くないが、西側スパイに大音量をヘッドフォンで聴かせ苛めながら、後ろで女性担当官がごく平然と読み物をしているのだ。これがこの職場の正しさ。

知性的で人情的なキャラクターがじっくり滲み出てくる主演ゲイリー・オールドマンが秀逸。例えば、現地工作員が惚れた女が既にどうなったか、知っていて敢えて本人に知らせないなど、描写はどこにもなされないが、観た後、気付くのだ。スケールは違ってもこのような配慮が出来る上司が、周りにいるかどうか。

コリン・ファースは出番は限られるが要所を押さえた存在感で、目の演技だけで同僚との過去を表現してみせた。『シングルマン』『英国王のスピーチ』『裏切りのサーカス』は3年連続キャリア・ハイですね。

私訳「シングルマン」(7)

Snow by Abel Korzeniowski on Grooveshark

今回のシーンは、映画冒頭、主人公ジョージ(コリン・ファース)が夢の中で、交通事故の現場へ失った恋人に会いに行くところ。後のシーンでジョージは臨終の際はもちろん、相手の家族の意向で葬式にも行けなかった事が観客に分かります。
ファースのゆっくり近づく足取りが厳かで、何やら能を思わせました。

colin
1962年11月30日金曜日、於 薄暮の雪道

ジョージは雪の中を歩いていく。穏やかに降る雪道を静かに足を伸ばす。全てが静寂。ジョージの目前、カメラの視界にはスリップしてクラッシュした車。辺り一面、壊れたガラスと車の横滑りした跡がある。テールランプは点いたまま、バンパーからは煙が上がっている。運転席側の粉砕した窓からドライバーの体が飛び出している。

事故現場に辿り着き、ジョージは死んだドライバーの血まみれの顔を見る。それはハンサムな30代半ばのジム。傍らには壊れたフロントガラスから飛び出した血まみれの白犬が死んでいる。
雪の中、ジムの隣りにゆっくりと横たわる。彼は血まみれのジムの顔を見つめ、体を傾けジムの唇にキスをし、体を元に引く。
ジムの開かれたままの血で覆われた顔が、タイトにスクリーンを満たす。彼の眼は冷たいゼリーのようになっている。カメラは彼の眼がスクリーン一杯になるまでクローズアップ。
ぼんやりとした、ドラムのビートのような反復的な轟音が鳴り、さらに大きくなっていく。

ドリスの10" LPs(2)

ドリスの4CD、引き続き聴いています。最近はこれか『シングルマン』のサントラばかり。記事が進みませんね。
『シングルマン』の和訳については、サントラが届くのを待つ間の繋ぎとして記事にしたつもりが、和訳し出したらノッてきて(笑)。
以前、観光用英語を俄か学習していたら、外大出身の元知人から「そんな簡単な英語やってるの!?」と馬鹿にされたものだったが、いざ取り組んでみると、これって自分の言語感覚が肝なんじゃないか?と感じた。たしかハリポタの訳者さんが「日本語を大事にすること」と言ってた憶えがあるが、多分そのことだと思う。

それでそのドリス4CDは、約10枚のLPを収録、約100曲収録されていて、初めは順番通り、またはランダムに聴いていたのですが、オリジナル・アルバムごとに区切って聴くと、次第にアルバムの性格が掴めてきました。
いまのところ最もお気に入りとなったのが、1951年『Lullaby Of Broadway』。10インチなので8曲入り。

オリジナル・ジャケ
doris

特に1曲目の表題曲がいい。別録音もあるが、僕はこちらのほうが好きですね。ドリスのヴォーカルはもちろん、楽しい男女バック・コーラスのアレンジなど、最近の音楽聴くより豊かな気分になれるんじゃないかと思うほどです。映画自体はいずれも未見ですが。

以下はこのアルバムから。


http://youtu.be/OEu8rxiXznM

泣けるヒッチ

2年ぶりに映画館に足を運びました。
hitch

封切日のレイトショーにて。スクリーンって大きいなぁと感動してしまった。以下、感想をランダムに。

・『サイコ』は少なくとも事前に観ておいたほうがいいでしょうね。出来れば前後作まで。再現シーンでニヤリとする箇所多々あり。ヒッチとヴェラ・マイルズとの確執については、説明はあるものの予備知識無く観る人にはピンとこないんじゃないかな。
・アンソニー・パーキンス役の俳優がそっくりな物腰だった。顔自体はそんなに似ていないのに。
・作曲家バーナード・ハーマンもそっくり。ハーマンの貢献の大きさも再実感しました。
・夫婦の確執、絆が主軸になっていると思うが、自分が一番重く感じたのは映画製作におけるリスクの大きさ、そしていかに監督業が精神的に追いつめられるかということ。
・アルマは、『サイコ』製作中に限って、友人の脚本家との共同執筆にいそしんでおり、本編ではどれだけヒッチに貢献したか、実はほとんど描かれていないのに、ヘレン・ミレンの演技の重厚さで説得力を持った。
・ラストは図らずも涙が少し出た。あのシーンで泣けるとは…。このクライマックスは日本の演劇まんが『ガラスの仮面』といわば同じ手法ですね。

ただ、予想通り繰り返し観たい類の作品では無かった。でも、ヒッチの伝記映画が作られるとは夢にも思わなかっただけに、有難く観賞しました。

以下は、アンソニー・ホプキンスのインタビュー映像
http://cinema.pia.co.jp/news/161173/50768/

上野で生オーケストラ付きの『サイコ』上映やるらしいですね。観たいなぁ。

私訳「シングルマン」(6)

A Variation on Scotty Tails Madeleine by Shigeru Umebayashi on Grooveshark

『めまい』に酷似したサントラがこの曲。しかもタイトルが「スコティはマデリンを尾行する」と、『めまい』の男女の主人公の名がそのまま付けられている。

シーンはジョージが当夜の自殺決行前に、自分の貸金庫を整理するため、銀行に訪れる。そこで、偶然近所の母娘に出会うのだが、いつもは騒々しく疎ましく感じていた少女が、この時、鮮烈な美しさをもって目に飛び込んでくる。
トム・フォード監督は、なぜここでこのサントラを挿入したのだろう。豊潤なブロンド髪という共通点からか。監督の美意識が表れ出たシーンである。

colin
サンタモニカ・ナショナル銀行-窓口

BANK TELLER
ファルコナー様、他にご用件は?

ジョージがブリーフケースの中を探りながら、

GEORGE
幾らか現金化したいんだが、小切手帳が見当たらない。ちょっと待ってくれるかな。

ジョージは革張りのソファに腰掛け、ブリーフケースの中をあらためて探し始める。
そこへ、小さな2つの鮮やかな色をした青い靴が視界に入ってくる。
その少女はジェニファー・ストランク。ジョージは少女の美しさに目を奪われる。彼女の青い瞳は靴の色に似合っていた。物言いたげにジョージを凝視している。

(カメラはゆっくり少女の頭まで見上げる。文字通り美しく。カメラは足から腕へ、少女のブロンド髪をとらえる。カメラは彼女の眼のところで止め、青い瞳をズームアップする。彼女の浅い呼吸が聴こえる。金色の睫毛がスローモーションで瞬き、呼吸音が次第に高まる。)

ジョージは息を呑むほど驚いた。小さな少女が自分を無邪気に見つめていたのだ。少女は小さなガラスの飼育カゴを携えている。

JENNIFER
ママがあなたの眉毛、変だって言ってたわ、でも私は可愛いと思うの。
GEORGE
そうか、君のも可愛いよ。
JENNIFER
なぜそんなに悲しそうなの? チャールトン・ヘストンの映画を観れば?
GEORGE
どうして?

ジェニファーは飼育カゴを差し出してみせる。その飼育カゴの中は紙で作った円柱で取り囲まれ、大きな黒い蠍と、棒にしがみついた小さな蜘蛛がいる。

JENNIFER
ベン・ハーよ。これはうちで飼ってる蠍なの。毎晩、私の家族はみんなで虫を放り込んで、蠍が殺して食べるところを見るの。パパはなんだかコロセウムみたいだって。それでトム兄さんが柱を立てたの。トム兄さんは舞台監督になりたいって。蠍は蜘蛛をまだ食べないの、ゆうべ蛾を与えてからお腹がまだ一杯なのね。パパは、このカゴにあなたも投げ込みたいって。
GEORGE
怖いな。なんで?
JENNIFER
あなたがサオナシだからって。釣りはしないのにね。トム兄さんもあなたと同じらしいの。兄さんは先週、卵で私の髪をトリートメントしてくれたわ。つやつやでしょう?

そこへジェニファーの母親、ストランクが現れる。フレンチ・ツイスト風に結った明るいブラウン色の髪が美しい。

MRS. STRUNK
ジェニファー、ファルコナーさんのお邪魔になるでしょう?
GEORGE
いや、スーザン。こんにちは。
MRS. STRUNK
会えて嬉しいわ、ジョージ。そう、ジョージ、今夜私達の家でホーム・パーティをするのだけど、あなたもどうかしら?
GEORGE
ありがとう、でもあいにく今夜は予定があるんだ。
MRS. STRUNK
そうなの、それじゃまたの機会に。ジェニファー、来なさい。ファルコナーさんは用事があるのよ。ではね、ジョージ。
GEORGE
さよなら、スーザン。さよなら、ジェニファー。

立ち去る母娘に、ジョージはほんの少し微笑んだ。ジェニファーの青い瞳が振り返り、ジョージをじっと見つめた。

私訳「シングルマン」(5)

Baudelaire by Serge Gainsbourg on Grooveshark

セルジュ・ゲーンズブールのCDは、むかし1枚だけ持ってた。女装したジャケのやつ。でもほとんど聴いてなかったな。フレンチ・ボッサは、その発音からか独特のウェット感があります。

以下は主人公ジョージが大学研究室から元恋人チャーリーに電話をかけるシーン。
有閑マダムのチャーリーは、化粧台で今晩ジョージに逢うため念入りにメイクをしているところだが、わざと間を置いてから電話を取り「読書してたわ」なんて嘘言ってる。未だ恋慕する感情と、中年の危機感が合わさって巧く表現されています。

colin
サントーマス大学-於 ジョージの研究室 夕方前

ジョージは自分の研究室を片付けている。引き出しを整理し、要らなくなった書類をゴミ箱に捨てる。一点の汚れもないように。引き継ぐべき3つの重要ファイルを机の上にきちんと置き、それ以外は完全に空にする。

ジョージは座ったまま、溜め息をつく。しばし瞑想。
ブリーフケースを開き、何かを探し出す。アスピリンの瓶を見つけ、残りの3錠を手にする。片づけた机の引き出しから、ほとんど空になったスコッチの瓶を出す。栓を開け、アスピリンを流し込むように飲み干す。
受話器を上げ、電話をかける。

CHARLEY
どなた?
GEORGE
何してる?

colin
チャーリーの家-化粧台

チャーリーの髪はブラッシングとヘアスプレーの最中で逆立っている。顔もメイクの途中である。まるでヴォーグ誌から抜け出したような念入りなアイラインで、まだ一方の眼は終わっていない。部屋じゅうドレスが散らかっており、バックにはセルジュ・ゲーンズブールのレコードがかかっている。

CHARLEY
本を読み終えたとこよ。
あなたはこれからどう?
GEORGE
仕事は終わった。今夜のために何か買ってこようか?
CHARLEY
あら、優しいのね、でも全部揃ってるわよ。

彼女は拡大鏡に自分を映す。

CHARLEY
ああそうだわ、ジンを買ってきてくれる? タンカレーよ。あの瓶の色が好き。
GEORGE
瓶の中身がだろ? 何時に行けばいい?
CHARLEY
7時がイイわ。
GEORGE
了解。今夜行くよ。
CHARLEY
じゃ後でね。バイ。
GEORGE
ああ。

彼女は電話を切り、化粧の続きをする。レコードに合わせて少々踊りながら、鏡を見つめる。

CHARLEY
きれいよ…。

英国ことば遊び

リース・ウィザースプーン、コリン・ファース、ルパート・エヴェレット、ジュディ・デンチ主演の『アーネスト式プロポーズ』DVDをレンタルが無かったので中古購入しました。2002年イギリス映画。

colin
原作はオスカー・ワイルド『真面目が肝心(The Importance of Being Earnest)』。

アーネスト(Ernest)という偽名を使って社交する二人の男が、偶然にもアーネスト(まじめ)という名前の男性との運命的な結婚を夢見ていた2人の女性と出会い、後に引けなくなってしまうというコメディ。

初めはこの虚構に慣れるまでに時間がかかりましたが、4人の男女役者の台詞掛け合いと間合いの取り方がうまい。そこへ貫禄のジュディ・デンチ、トム・ウィルキンソン他が加わる。ドタバタといっても、イギリスならではユーモアが何とも上品です。単純なお話のようで、仕掛けのタイミングが絶妙です。

オールド・タイミーなサントラがのどかで、リピートしても楽しめる。以下のシーンは、偽名がバレて、男達が懸命に女性達を振り向かせようとする。歌でね。

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プロフィール

 シャケ/YASUHISA

Author: シャケ/YASUHISA
男性 昭和40年代生まれ

愛猫カオ(ロシアンブルー)と同居
常にマイブームがないと生きていけない

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