私訳「シングルマン」(4)

Blue Moon by Jo Stafford on Grooveshark

「ブルー・ムーン」という曲を最初に知ったのは、'90年頃だったか、カウボーイ・ジャンキーズというバンドの、マーゴという気だるい歌い方の女性ヴォーカルでだった。当時、江坂のブーミンホールまでライヴを観に行きました。
プレスリー、シナトラなど多く歌われていますが、映画の影響もあって今はジョー・スタッフォードの歌唱がお気に入り。

その『シングルマン』私的対訳は、主人公ジョージと今は亡きパートナー、ジムとの出会い場面から。ジョージの行きつけのバーでは「ブルー・ムーン」が流れています。

colin
フラッシュバック-於 スターボードサイド・カフェ 1946年夜

ジョージは若い海軍士官御用達のバーの前でタバコを吸っている。
ジョージは今しがた店に入っていった一人の海軍士官に目を留める。少ししてから、その彼がビールを持って外に出てくる。ジムである。

JIM
店の中は暑いね。
GEORGE
ああ、タバコ吸うかい?
JIM
いや、結構。吸わないんだ。この辺はいつもこんなに混んでるのかい?
GEORGE
ああ、特に週末はね。大抵の奴はここでナンパして夜中に浜辺でいちゃつくのさ。
JIM
ほんと、この辺はすごいよね。
警察が咎めないのには驚いたよ。いつもこうなのかい?
GEORGE
終戦以降さ。いい感じだよ。異端でね。

ジムは手を差し出す。

JIM
僕はジム。

2人は握手を交わす。

GEORGE
僕はジョージ。よろしく。
JIM
ここで何人かの友達と会うはずだったんだけど、見当たらないんだ。
GEORGE
僕は散歩していたらビールが飲みたくなって。

ジョージはタバコを取りだす。

JIM
近所に住んでるの?
GEORGE
ああ、峡谷に。
JIM
住んでどれくらい?
GEORGE
‘38年から。君は何処から?
JIM
コロラド。僕はこっちのほうが好きだな。除隊後はここに住もうかと。海が近いし。それに、僕も異端なのかも。

雨が降り始める。2人は顔を見合わせ、さらに激しい降りに思わずバーの中へ走り込む。
店内をすし詰めになりながら、ジョージとジムは人混みを分け入っていく。店内は大声で喋らないと聴こえないほど騒々しい。

JIM
もう一杯飲む?
GEORGE
いいね。

その時、ヴェロニカ・レイク似の髪型で、シェリーレッド色の口紅をひいた金髪女が、2人の間に割って入る。ジムを見上げて、

BLONDE GIRL
ねぇ、こんばんは。
JIM
やあ。
BLONDE GIRL
一杯奢ってよ。

ジムはブロンドガールをかわしながらジョージを見つめる。

JIM
悪いね、先約があるんだ。
BLONDE GIRL
あーら、残念。残念ね…。

彼女は、2人の男が微笑み合うのを押しのけ、人混みに戻っていった。

ミックス・バランスの違い

鼻炎ごときでお騒がせしました。毎年こうなんです。数日経つとケロッとしてる。アレルギーにもいろいろあるけど、チーズの一片だけで死んじゃう子とか可哀想ですね。

さて、由紀さんの新譜『スマイル』を買いました。(今月買い過ぎた。来月更新減ります。)
yuki

1. ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ
2. オ・シャンゼリゼ
3. ウィークエンド
4. 悲しき天使
5. スマイル
6. ムーンライト・セレナーデ
7. セプテンバー・イン・ザ・レイン
8. ナオミの夢
9. 手紙
10. ユー・アー・マイ・サンシャイン
11. 愛だとか(ボーナス・トラック)

これは先行シングル「愛だとか」(今回、ボートラで収録)をDLして聴いた時点で懸念していた事なんですが、大サビに向かって楽器の音を重ねるほど、由紀さんのヴォーカルが埋もれていく。
ピンク・マルティーニのアルバムはミックス・バランスがいいんですよ。普通っぽいけど、実はバッキングの抑制が利いていて、あれほど大所帯バンドなのにヴォーカルの芯が通っている。

この事は、由紀さんとピンク・マルティーニのライヴに行って気付いた。生はとてもワイルドなんです。トーマスさんは、スタジオ録音とライヴのサウンドは明確に切り離して捉えていると思います。

今作、ピカピカの音響だけど、ちょっと音圧高いかな。今日びの録音は、どれもヴォーカルとバックが分離してしまって溶け合わないものが多い。パフォーマンスは申し分ないんですよ。

それで『1969』を今一度聴き直すと、お抱えのストリングス・チームも、ほんのり薄く入っているだけ。「夕月」に大合唱が入ってるの、ご存知でしたか? シンセで代用できるのでは?と思うほど、ほんのりしか入っていない。こうした隠し味的なミックスのセンスは、トーマスの、あれほどのバンド・メンバーを抱えながらも、"歌モノ"への理解があるからだと思う。加えてアナログの質感に対するこだわりもあるはず。

今作、くれぐれもパフォーマンスはいいと思います。あとは、選曲が分かりやす過ぎるかな。セリフの入った数曲も、ちゃめっけがあって表情豊かだが、繰り返し聴くには、やや流れを止める感も。(5)(6)の流れが渋くて、全編このトーンだったら自分は好きだけど、今後のステージ活動も考えて、幅広い層に受ける選曲にされたのだろう。

(8)は再びニシモト氏が、控え目でクセのない魅力的なハーモニーを添えています。

私訳「シングルマン」(3)

Becoming George by Abel Korzeniowski on Grooveshark

『シングルマン』の冒頭は、主人公、大学教授ジョージのモノローグで始まる。
ジョージは、同居していた亡き恋人、ジムが帰省中の事故に遭う夢を、以降毎晩見ては眼が醒める。
ジョージのベッドの傍らには、今日の夜の自殺に備え、知人関係者に宛てた遺書。そのまま眠りに就いてしまったため、シーツにはインクの染みが拡がっている。
(柱書き、ト書きは割愛して独自に訳しています。解読できなかった箇所は字幕から補完。)

colin

「目覚めは、”在る”と”今”で始まる」

「ここ8カ月の目覚めは、本当に辛い。
自分がまだここにいるという冷たい現実。」

「私は目覚めが嫌いだ。」

「私がベッドから起き上がれないでいると、
隣りでジムは笑って飛び起きたものだった。」

シェービングを始める。

「朝っぱらから、彼がとても幸せそうにしていると時々殴ってやりたくなった。」

「私はよく、一日を笑顔で迎えられるのは馬鹿だけだと言ってやった。馬鹿だけが、「今」は単純な「今」じゃないという当然の真実に気づいていない。昨日より遅い一日、去年より遅い一年。そして"それ(死)"は遅かれ早かれやってくる。」

「彼はそんな私を笑って、頬にキスするのだった。」

「ジョージになるための朝の時間だ。世間が期待する自分に整えていくのだ。」

「私はシャツを着て、まだ硬いが仕上げの磨きをかければ、完璧なジョージ。」

「鏡に映る私に、苦悩の影は見えない。」

(鏡を見ながら自分に呟く)
「この辛い一日を生き抜け。」

「・・・芝居がかっている。」

(身支度を終え、ふとガラス越しの庭に、在りし日のジムが
2匹の飼い犬とじゃれている幻を見る。)

「そしてまた私の心は壊れそうになる。」

The Pied Pipers

ジョー・スタッフォードのCDを買おうとしてサイトを見ていたら、「この商品を買った人は、こちらも買ってます」という他の商品リンクがあって、そちらのアーティストのほうを試聴すると良い感じだったのでクリックしてしまった。
ザ・パイド・パイパーズの50曲入り2枚組、1000円程度。
pied

男性3人に女性が1人、'40年代中心に活躍したアメリカのハーモニー・ヴォーカルのグループ、ということ位しか知りません。
グループ・ヴォーカルのためか、符割を崩さず、端正に歌っているのが好印象です。教科書に出てくるフォークソングのような穏やかな易しさで、ソロ・シンガーの歌うジャズ・スタンダードより、合わせて一緒に歌い易い感じがします。
どういうわけか、ハワイアンにも似たクルージング感も感じました。
当然ながらモノラル、音質はこの時代にして良いほうだと思います。

We'll Be Together Again (remastered) by Pied Pipers on Grooveshark

私訳「シングルマン」(2)

Stormy Weather by Etta James on Grooveshark

『シングルマン』劇中、ジョージ(コリン・ファース)と元恋人チャーリー(ジュリアン・ムーア)のダンスシーンでかかる曲は、エタ・ジェイムスが歌うハロルド・アーレンの「Stormy Weather」。パワフルかつスウィートなヴォーカルが気分を盛り上げる。

colin
スクリプトの私訳は、この曲の後、もう1曲2人が踊って、いい感じで床に倒れ込むシーンから。ジョージはチャーリーの頭にクッションを敷いてやり、二人分の煙草に火を点ける。一部解読できない箇所は字幕から補完しました。
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(チャーリー)
タバコの扱いが上手ね
(ジョージ)
前からやってみたかったのさ
(チャーリー)
吸わないくせに
(ジョージ)
そうさ、16年吸わなかった。ジムが嫌ったからね。
でも、もう意味ないさ
(チャーリー)
あなたとこうやって寝そべるのいいわ。あなたもこうしたくなかった?
私たちお互いどうにか出来たんじゃないかしら? 本当の繋がりや子供が持てたんじゃないかしら?
(ジョージ)
[驚いて]僕にはジムが
(チャーリー)
わかってるわ、でも、私は本物の繋がりの事を言ってるの。ジョージ、正直になりましょうよ、
あなたとジムは素晴らしい関係だったけど、何かの代用じゃなかった?
(ジョージ)
君は本気で言ってるのか? ジムが本物の愛の代用だったと?
[起き上がって]ジムはどんなものにも代えがたかった。ジムの代わりなど何処にもいやしない! じゃところで、君のリチャードとの繋がりはどうだったんだ? 彼とは9年しか続かなかったくせに。僕とジムは16年間一緒に居た、彼が死ななかったらもっと続いたんだ。この生き地獄が本物じゃないとでも?!
(チャーリー)
ごめんなさい。あなたたち2人がどれだけ愛し合っていたか知ってるわ。
あなたと私はそういう関係になれないから少し嫉妬したの。事実、私は誰ともそんな関係になれなかった。リチャードも私をそんなに愛してくれなかったわ。表面だけ。子供に愛情を注いでも大きくなればやがて離れていく。
(ジョージ)
チャーリー、君の人生は悪くない。君のは自己憐憫なんだ。
(チャーリー)
あなたも私と同じように憐れじゃないの!
(ジョージ)
僕は自分に酔ったりしない。
(チャーリー)
私だって違うわ。自分を憐れんだりなんかしない。私は夫と長続きするよう頑張ったし、子供も育て上げた。なのに今はどうすればいいの?
(ジョージ)
君は友達が多いだろ。いいじゃないか。
(チャーリー)
そうよ、友達は多いわ。でも誰も必要としてくれない! あなたがゲイ(goddamn poof)じゃなかったら、私たち幸せになれたのよ!
[気を取り直して]あなたはジムを失くしたから今ここに居るけど、また誰かのとこに行くんだわ。結局、私はジンのボトルに慰められるだけ。
(ジョージ)
ドーナツ付きでな。
(チャーリー)
いやな奴!

私訳「シングルマン」(1)

Stillness of the Mind by Abel Korzeniowski on Grooveshark

『シングルマン』のサントラが品切れで、まだ届かないので代わりにネットで探して聴いてるのだけど、ほとんどヨーロッパ映画のムードですね。ふと『暗殺の森』や『ラスト・タンゴ・イン・パリ』あたりを想い出した。
阪神淡路大震災で北浜の三越劇場は閉館してしまったけど、それまではあそこでヨーロッパ映画をよく観たものだった。最終上映後、階下のデパート閉店後の静まったフロアを警備員に誘導されながら出るのが好きだった。大通り(証券取引所がある)もエキゾチックで、観賞後の気分に浸りやすかった。

以下は『シングルマン』の原文スクリプトから1シーンを私的に訳しました。ぎこちない部分もあるけど、後で字幕と照合すると大体合ってました。
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ジムの従兄ハロルド・アカリーからの電話

(ジョージ)
やっとかけてきたか、一日じゅう雨が降って家に閉じ込められてる僕が、ずっと君の電話を待っているのを分かっていただろうに。
(ハロルド)
すみません。電話番号を間違えました。私はファルコナーさんにかけたつもりでして。
(ジョージ)
ああすみません。別の人からかかってきたのかと。うちで合っています。あなたは?
(ハロルド)
私はハロルド・アカリーと申します。ジムの従兄です。
(ジョージ)
ああ、それはどうも。こんばんは、アカリーさん。
(ハロルド)
残念ですが悪い報せがありまして。
(ジョージ)
といいますと?
(ハロルド)
交通事故がありまして。
(ジョージ)
事故?
(ハロルド)
このところ雪が多く道が凍っていまして。実家への途中、ジムはハンドルをとられて・・・即死でした。
(ジョージ)
おぉ。
(ハロルド)
昨日の遅くでした。ジムの両親はあなたに知らせてくれるなと。
(ジョージ)
そうですか…。
(ハロルド)
事実、私からあなたに電話しているのを知りません。けれど知らせるべきだと思って。
(ジョージ)
ありがとう。
(ハロルド)
ショックですよね、お互い。
(ジョージ)
ええ、本当に。
(ジョージ)
お葬式は?
(ハロルド)
あさってです。
(ジョージ)
それじゃ、私は電話を切って飛行機のチケットを取らなければ。
(ハロルド)
葬式は身内だけで行いますので。
(ジョージ)
身内だけで。そうですか…。電話をありがとう・・・あ、アカリーさん?
(ハロルド)
はい
(ジョージ)
犬たちがどうなったか教えてもらえますか?
(ハロルド)
犬たち? 彼と一緒に一匹死にましたが、他にもう一匹いましたか?
(ジョージ)
ええ、小さなメスです。
(ハロルド)
そうですか、私はそのへんは分かりません。誰からも聴いていないのです。
(ジョージ)
そうですか、電話を有難う。アカリーさん。
(ハロルド)
さようなら、ファルコナーさん。

ドリスの10" LPs

doris

おやぢさんの記事で知った、ドリス・デイの初期10インチ~一部初期12インチ('49-'56年)まで網羅した4CD廉価盤をゲット。マケプレで海外から取り寄せました。プラケースに微細なヒビが入っているが、ま、しゃーないか(仕方ないか)、って感じ。

ドリス・デイのディスコグラフィー(オフィシャル)

音質はそこそこ。悪くない。あえて低く流して部屋の片隅のラジオから聴こえてくるような風情にすると、もはや感覚は生まれる前のあの頃に(笑)。10インチのLPは、実家に一枚も無かったと思います。

初期は、男声コーラスと交互に歌う形式が多い。先日、某評論家さんが、リアルタイムに熱中したドリスについて、60年代以降はベタついてダメ、って書いてたのを読んだけど、確かに以降ソロが増えてくるにつれビブラートが目立つので、そのあたりの好みの違いの事かな。

それにしても4枚通しで聴くと、大抵は飽きたり、もたれてくるものだが、それがない。適度な軽妙さが、けして耳を素通りすることもない。エンタテイナーの絶妙な匙加減。
『Day Dream』だけ、手持ちLPとかぶったので、これはゆくゆく手放そう。たしか中古屋で3500円はしたけど…。



Bloody Stammer

俳優に夢中になるのは久しぶりの事で、アル・パチーノ以来かな。デニス・クエイドも一時いいと思ったけど、あの人、B級のサスペンスやアクションの出演も多いんだよね。アメリカ映画やドラマに興味を失ったら、英国俳優コリン・ファースはいかがでしょう。やはり「眼」はパーツの中でも大事で、この人の温かい眼が気に入った。体を鍛え過ぎていないのもいい。馬鹿な女性なら、華やかなヒュー・グラントのほうが好きそう。
ちなみに好きな女優は以前も書いた通り、故モナコ王妃のグレース・ケリー。30代だと知らない人は多そうです。

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『英国王のスピーチ』も再見ついでに購入。コレクターズ・エディションでは、国王スピーチの原稿など特典付き。あわせて英和シナリオも買っちゃった。にわか学習してみると、やはり英語堪能な人はもっとドラマが楽しめるんだろうなと思う。英・豪の訛りなどユーモアは字幕や吹き替えでは解らない。
吃音がテーマで、厳粛なスピーチ・シーンなど会話の速度は噛み砕くように遅いので助かる。

伏線の無いドラマなので、初見時はそれほどのめり込まなかったが、逆にこれだけで見せ切ってしまうのは凄い。またここ2年、自分が発声障害を抱えた事で、見方も変わった。
コリン・ファースの吃音演技は英国吃音協会のお墨付き。喋り方を治す本は沢山あっても、吃音になるための学習本はどこにも無いので苦労したそうだ。どの程度吃音を発するかによって映画の長さも変わってしまうし、気味悪がられるのではないか、といった作品仕上がりの心配もあったとか。

好きなシーンは、ヨーク公が車の中で矯正練習しながら妃殿下に悪ふざけのキスをするシーン、開戦スピーチのリハーサルでの訓練士ライオネルとのやり取り、あたりかな。

コメディ2本

引き続きコリン・ファース主演の2本を観ました。

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・いとしい人(2007)
やや社会派要素も含んだコメディ。ヘレン・ハントが子供を産みたがる39歳独身を演じるが、39歳に見えないほど、ほうれい線とおでこの皺が目立つ。先日アカデミー賞をTVで観た時は、綺麗だったのに。初監督も兼ねた事で、相当神経のつかい過ぎで外見までケアできなかったのでは?
ベット・ミドラーのパワフルな演技もやや空振り気味。妻に去られ2児の子育てをするコリンのくたびれた演技は良かった。ヘレンがコリンとよりを戻す時に、なぜ体外受精をした事を告白しないのか、ヒロインの心情が読み取りづらかった。テーマを少し欲張り過ぎたのではないだろうか。

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・スプリング・ガーデンの恋人(2003)
これは国内外で評判が芳しくないようだけど、僕は楽しめた。コリンが失恋の傷心により、英国からはるばるアメリカの田舎町「ホープ」に訪れる。監督は『ブラス!』などのマーク・ハーマン。脇役はメアリー・スティーンバージェンなど好演。
評価が悪い理由は女性ファンがコリンの恰好悪い場面がイメージに合わないからだろう。でも、『ブリジット・・・』の時のような内面が見えない役柄に対し、男性生理も描いたこちらのほうが面白い。ヒロインの脱ぎっぷりにも違和感があったのだろうが、変な人物は田舎のほうが目立つものなのだ。ミニー・ドライヴァーがいかにもな敵役。電話、パソコン、マフラー、蝶々の婚約指輪、紙の材質など、小道具が随所に活きる。

Scene D'Amour

vertigo

『シングルマン』の特典にあるトム・フォード監督のコメンタリーを聴いていると、いきなりオープニングで「音楽はバーナード・ハーマン作曲の『めまい』の影響を受けている」とあって、やっぱりと思った。よく見るとエンドロールにもクレジットされていた。
久しぶりに『めまい』のサントラを聴いていると、これ以上のサントラは無いかもと思う。

愛と死、というテーマにおいて2つの作品は似ている。特に『シングルマン』終盤、眼鏡をはずしてからのコリン・ファースの演技の素晴らしさはどうだろう。スーツの鎧を脱いだ後だ。繰り返し観ると、まったく無駄の無い、かつ密度の高い演技に驚かされる。中年俳優が終始スクリーンに出ずっぱりで、モノローグのような主観的描写だけで、これほど惹きつけられたのは初めて。

ギャガから出ている『シングルマン』国内盤は、英語字幕が付いてないので、ネットでシナリオを探し出して映画の日本語字幕と併読中。とても会話のペースに付いていけないので一時停止を繰り返しつつ。
特にコリンとジュリアン・ムーアの大人の会話が愉しい。"ドーナツ"のジョークは、監督によれば、本国でもピンとくる人は限られていたそうだが、何故か僕はすぐ解ってしまった。

いつもは2chで観ていたが、久々にリア・スピーカーも接続して、サラウンドも楽しんでいる。

『めまい』サントラより「Scene D'Amour」
Scene D'Amour by Bernard Herrmann on Grooveshark

7人の子供とシンデレラ

コリン・ファースの出演作は、どれも役柄が違うので、系統的に観ている気がちっともしない。こちらは、エマ・トンプソンとの共演ファンタジー、『ナニー・マクフィーの魔法のステッキ』('05)。エマは脚本も担当。
colin

これも今レンタル中だが、とても楽しいので購入したくなってきた。ディズニーほど壮大でもなく、ハンドメイドな温もりで、家庭の育みを伝える映像に親しみを感じた。

コリン・ファースは妻を亡くし、7人のいたずら好きの子供達を抱える葬儀屋を、チャーミングに演じた。子供たちのキャスティングもいい。落書きで仕立てられたようなセットの色彩も可愛い。

特典の削除シーンを観ると、いずれも説明的なものばかりで、結果、無駄なく想像力を残していると納得。最近、立て続けに色んな作品を観て、カップルの関係を必然性と意外性をもって描くのは、難しいものだとあらためて知った。

ばあやに扮するエマ・トンプソンのイボが、子供達が良い子になる度、消えていくのはなぜ? そんな事を考えながら眠りに就く日が、大人になってもあるとは夢にも思いませんでした(笑)。

その瞬間が生きろと囁く

先日、アカデミー賞の模様をTVで観ていたら、各賞の授与際のBGMに『めまい』のサントラが、他の名立たる大作と同様に使用されていて驚いた。『めまい』は公開当時は中ヒット程度で、現在ほど傑作と評されてはいなかったのだ。

繰り返し観ないと解らない映画もある。デザイナー、トム・フォード初監督、コリン・ファース、ジュリアン・ムーア主演『シングル・マン』('09)を数年ぶりに2度目のレンタル、再見しました。

colin

これは2度目に観たほうが余韻が残った。初回は何の予備知識も無かっただけに、映像をただ追うばかりだった。
初見レビューは過去記事に書いたはずだが、当時、スタイリッシュすぎて、どうも耽美的で、ついていけない印象を持っていた。

今回、自殺を決めた男の一日の物語であると念頭に置けば、自分でも驚くくらい集中して再見できた。そう、このトーンは主人公の視線なのだ。コリン・ファースの演技が素晴らしく、他に代わる俳優は思い付かない。
なんて自分はマヌケなんだろう、主人公が過去に心臓発作を起こした点を初見では見逃していたようだ。だから、結末が出来過ぎのように誤解していたのだ。

偏見の描写は、近所の子供の視線をつかって微妙に表現される。子供は親の口真似をする。
過去の恋人で女友達チャーリーを演じたジュリアン・ムーアも、複雑な役どころを好演した。『エデンの彼方に』に共通する役柄だが、あの慎ましやかなヒロインとは180度違う性格。だが、哀しい。

時折、生気を帯びる画面は、死を決め暗く閉ざした心の中にさえ芽生える命の瞬き。生き残される事などないのだ。
『めまい』のサントラに良く似た滑り出しのストリングスが心地良い。結局レンタル中にも関わらず、Blu-rayとサントラを注文してしまった。

先ほど、トム・フォードさんの最新コレクションをサイトで初めて見たのだけど、僕には着られない細身のスーツばかり。綺麗すぎる!

イファゲニアのバラード

スギ×PM2.5×黄砂でもってしても、何ともない人がいるのは、どういうことなんでしょうね。自分はアレルギーが理解できる人とじゃないと付き合えないかも。ケロッとしている人は、露骨に眉をひそめるから。

美しく落ち込むにはギリシャ。ハリス・アレクシーウ'84年作『エムフィリオス・エロタス』。
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こちらはライカ・アルバム。落ち着いたキーで味わいのある歌謡曲を聴かせる。ギリシャの歌手って、ライカとレンベーティカを歌うのに、何か意識的に区別しているんでしょうか? どうもそうとは思えないほど、本能のまま節を回しているように感じる。濃淡のスイッチなど無いかのように。

初期アルバムもやはり良いので、ハリスだけは今後最終的にコンプリートにしたいと思う。ダラーラスは枚数多過ぎて無理(笑)。
大手の場合、まとめ買いならHMVが安いが、Amazonはレートによって、単価が安くなる時もある。ある評論家さんのサイトを読むと、危機の影響で現地からの直購入が最安値だそうだが、大人買いをしているから送料負担が薄められるぶん、単価が安上がるのだろう。僕も前に直買いした事があるが、送料が高い。この際、残りを一気に買うかどうか検討してみる。ハリスの初期ジャケはどれも似たような顔アップばかりだから、間違ってダブらないようにしないと。

アルバム・ラストの胸に沁み入るメロディはハリスの自作。チェロが誘う半音の転調が儚くも昂揚する。

I Balanta Tis Ifigenias by Haris Alexiou on Grooveshark

サスペンス?

呼吸が楽になってきたので再開。
'10年作、コリン・ファース主演の『ストレンジャー』(原題「Main Street」)が新作としてレンタル開始していたので借りてきました。

colin

「えっ、これで終わり?」とエンドロール中、茫然としてしまいました。どうしよう、レビューが書けない。鼻がグズグスだから頭が回らない?

きちんと起承転結はある。ただ、あれが山場だったのか、と思うほど小ぢんまりしている。小さな町の小さな事件だが、俳優陣の素晴らしさをもってしても、物語の魅力は伝わってこなかった。恐らく登場人物達が主人公を取り巻くようで、最後まで交わらないからだ。

この作品は、当初の計画通りに完成したのだろうか? というのも、同収録の日本語予告編をみると、本編と全く違った会話が出てくる。見知らぬ事業者(コリン・ファース)と地元の警官(オーランド・ブルーム)が全面対決するかのようなシーンは、本編では、何事も無かったような180度違うシーンだった。

ネット情報を拾い読みすると、なかなか買い手がつかず、オクラ入り寸前だったところ、コリンがアカデミー主演男優賞を獲ったので、はずみがようやくついたらしい。ちょうど『英国王のスピーチ』と同じ頃の製作だ。
少なくともホンのどこに魅力を感じて彼らは、本作出演を受けたのか、僕には解らない。
国内盤パッケージはれっきとしたサスペンス仕様だが、本国盤はそうでもない(画像)。映像自体は丁寧な仕上がりなのに残念。

男と男、男と女、女と女、男と男と女、男と男と男

引き続きコリン・ファース出演作をレンタルしました。ケヴィン・ベーコン共演で'50年代に一世風靡したショービズ界の人気デュオ役に扮する。アトム・エゴヤン監督'05年作『秘密のかけら』(R-18指定)。

colin

退廃的な空気感の纏う作品だが、二人の男優は華やかな表裏をイキイキと演じているようで、ケヴィンは若い時の爽やかな役柄から、クセ者の役柄が多くなったが見事にハマっている。控え目な存在感の役柄が多かったコリンも、暴力的な裏の顔と、常に不安を覗かせる複雑な面を好演した。

ストーリーが不安定で、当時のスキャンダルがいかにタブーであったか念頭に置かないと犯罪ドラマとしては少々肩透かしの感はある。

何よりジャーナリスト役のヒロインが気に入らなかった。知性と軽率さのバランスが悪い役柄なので女優のせいではないかもしれない。
いまひとつ子供時代からスターの彼らに憧れてきたという役柄が滲み出ず、ジャーナリストの父を持つ背景も遺品のテープレコーダー以外に全く嗅ぎ取れない。
ケヴィンに偽名を使った振る舞いは、ドラマ性を立たせる手管にしては、ヒロインへの共感を遠ざけるもので、コリンが差し出したカプセルに迂闊に手を出すシーンなど、コリンのドラッグ常習者の片鱗を窺わせる表現目的と引き換えに、いささか分の悪いキャラクター造形になっている。
それゆえラストシーンの被害者の母と対面するまっとうさには、鼻白むのだった。また、ヒロインと被害者女性を似た顔立ちの女優を起用したのは、明らかに意図的なようだが、初見では見分けがつきにくかった。

家族で観ると気まずくなる事うけあい。作品全体の質は高いとは言えないが、シーン毎にはよく締まっていると思う。

尺が足りない

先日初見したBBCドラマ『高慢と偏見』の、最新映画版をレンタル観賞しました。
pride

・プライドと偏見(2005)
キーラ・ナイトレイ (出演), マシュー・マクファディン (出演), ジョー・ライト (監督)

BBCドラマから約10年後の製作ですね。あの6時間ドラマをどう映画版では凝縮するのか、自然と比較してしまいます。原作(ジェーン・オースティン)は未読。
全体に映像とサウンドトラックの美しさが際立っている。が、いかんせん映画の尺では、これだけの登場人物を描き切るには限界を感じる。

例えば、
・ヒロイン、エリザベスの知性をどこで描写したのか掴めない。エリザベスが読書好きである事が日常描写から窺い知れないので、単に気の強い女に映る。普通の現代少女っぽい解釈に変更したのだろうか? しかし令夫人(ジュディ・デンチ)の「はっきり物を言う子ね」といったセリフは変更無い。

・そのため、エリザベスの父(ドナルド・サザーランド)が5人姉妹の中でも、とりわけ彼女を可愛がっていた理由も、ほとんど窺い知れない。彼女が末っ子の行状を危惧して父に進言するシーンも、凡庸になってしまった。

・ダーシー氏がエリザベスの妹の駆け落ちの始末金のカタを付けてくれた事を、何故二人だけの秘密にせず、エリザベスが父に明かしてしまう演出になっているのだろう。父は「あんな高慢な男」と言い放った直後に、金の工面の真相を聴いて「申し分無い男」などと早変わり称賛している。ドラマでは、「しっかりしたおまえが愛した男なら」と真相を知らぬまま親子の絆を窺わせていたのに。この終盤シーンは大きく深みに欠ける。

この時代の物語として、資産持ちが男の魅力であることは明らかだが、それだけでは恋愛が出来ない、という女性の正直な気持ちをキャラクター化したものだと捉えていただけに、
BBCドラマでは、エリザベスがダーシーにいつ惚れたか明確化していなかったのが、この映画では「私がバカだった」と、金の工面をきっかけにダーシー氏に一気に気持ちが傾いたのが描かれる。男女の間柄の不思議さが漂ってこない。二人の再会の回数自体が間引かれてるから、感情の育みが伝わりづらいのだ。

BBCドラマでは、ダーシー役のコリン・ファースは前半、あまり登場せず、偶然の再会が積み重ねられクライマックスへ向かう演出により、じょじょに男を上げていく。映画版ダーシー役のマシューは、起用された役者という先入観が拭えなかった。何よりウィッカムのエピソードが貧弱だから、手紙の説得力に欠ける。
キーラさんは美人だが、長女に次いで美しい二女、という設定に合わず、朝方、ダーシーと打ち解けるラストシーンでは、キーラのメイクがきつくて興が削がれた。キャスティングの自然さもBBCに軍配が上がる。

レンタル2本

ヒッチコックを除く、映画カテゴリを復活させました。もともと当ブログは映画記事から始まったのです(過去記事は削除)。最近は映画館にまで足を運ぶ機会は無くなり、ほぼレンタル視聴になるでしょう。
基本は変わらず音楽ブログでやりますが、いずれの記事も不定期です。映画感想も、以前より軽めに。
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・真珠の耳飾りの少女/スカーレット・ヨハンソン (出演), コリン・ファース (出演), ピーター・ウェーバー (監督)

フェルメールの名画にまつわる画家と使用人の少女の物語(フィクション)。ドラマ性は希薄なようで濃厚。これを書く直前、ネット・レビューにて「肉屋の息子を登場させる意味が無い」という意見を目にしたが、少女にとって画家フェルメールとの存在比較をするための大きな配分でしょう。少女とフェルメールの間柄を双方が言葉で示すシーンは皆無だが、明らかに彼女は欲情を肉屋の息子に転嫁したように見受けられた。
最近、アメリカ俳優の大袈裟な演技が鼻に付くもので、コリン・ファースの静の演技は、同じ人気俳優でも格の違いを感じさせた。



・聖トリニアンズ女学院 (史上最強!?不良女子校生の華麗なる強奪作戦)/ジェマ・アータートン (出演), タルラ・ライリー (出演), オリヴァー・パーカー (監督), バーナビー・トンプソン (監督)

キテレツな女子高生達の学園コメディ。お話はブラックから正義へ(?)。ルパート・エヴェレットを観たのは数十年ぶりなので、老け具合に驚いたが身のこなしが優雅。『アナザー・カントリー』、『高慢と偏見』のバロディが散見される。女子高生達がフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」に目を付けるシーンでも上述映画がネタにされるので、一連の作品を先に観ておいたほうがいいかも。
コリン・ファースに興味を持たなければ縁が無かっただろうおバカなコメディだが、キャラクター造形とメイクは凝っていた。続編もあるらしい。

洋上の宴

これまたギリシャの香りがたっぷりします。きのう届いたハリス・アレクシーウの'82年作『イ・ゾイ・ム・キクルス・カニ』。
ha2

1曲目が意外にもメジャー・キーの、最近作では聴かれないズンドコ節みたい。男声コーラスを従えて意気揚々と出帆するかのよう。タイトルの意味さえ分からないが自由に想像している。
このトーンがアルバム全体を貫いていて、定番のマイナー・キーも憂いを湛えつつ、他作よりどこか颯爽としている。比較的苦手だったレンベーティカも解放感があり聴き易い。とてもエネルギッシュでニュアンスに富む。

中村とうよう選曲国内独自ベスト盤解説によれば、とうようさんお気に入りの盤だそうで、"3曲選んでしまった"という記述通り、「カイークに乗る男」「愛をなくしても」「どの歌で」をベスト収録。
僕もこのアルバム、大好きになりそう。初期アルバムは古臭いんじゃないか?といった疑いも吹っ飛ぶ。スター歌手の艶やかさ、華やかさ。船上で彼女を取り囲みながら酒をあおる気分に浸れる。
音質優秀。このころの録音は素直で明るい質感。朝な夕なとりつかれそうです。

収録曲の後年ライヴ

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 シャケ/YASUHISA

Author: シャケ/YASUHISA
男性 昭和40年代生まれ

愛猫カオ(ロシアンブルー)と同居
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