生と性のエネルギー

新藤兼人監督が亡くなられたそうです。
数少ない邦画観賞の中でも、新藤作品は高校時代に偶然深夜放送で観た「鬼婆」の鮮烈さに驚いて、大学時代はシナリオを買って読み、社会人になってからDVDも購入した。

知り合った映像系の大学非常勤講師とこの監督作品について話題にした折、「夢やロマンが無いよ」と言われた。
でも自分は、かえってこのリアリティ、泥臭さにロマンがあると思うんですよね。人間を極限に追い込む場面が多い。物語やシチュエーションが及ぼす閉塞感は、ヒューマンなロマンに満ち溢れていたと思う。

また、役者の個性も素敵。主演レギュラーの乙羽信子を始め、太地喜和子なんて今の若手女優には目指したくても真似出来ないんじゃないでしょうか。脇役の殿山泰司の曲者ぶり。佐藤慶のいやらしいキャラクターも好きでした。

shindo

初めて観るなら、起承転結のテンポ感のよい「鬼婆」が分かりやすいのではないでしょうか。ゲイリー・オールドマンがかつてのインタビューで自らリメイクしたい作品だと語っていたと思います。
脚本担当のみですが、若尾文子主演の「しとやかな獣」もレンタルしてみてほしい。狂った昭和が垣間見えます。

今のところ馴染めず・・・

カラヤン&BPOの'60年代録音によるベートーヴェン交響曲全集をSACDで海外から購入しました。
kara
まだ一通り聴いただけなんですけど。期待したほどの音質感ではなかった。LPから買い替えてきた人にとっては、感動的だったようだけど。明細まで聴こえる奥行きは感じますが、厚みが足りないというか。でもネット・レビューを拝見すると演奏合わせ大方絶賛されているんですね。

カラヤンにはほとんど縁が無く、子供時代に実家に何枚かLPがあったが、自ら求めて好んで聴いたのはシベリウス演集だけだった。
今回、SACDとしては比較的安価だったという動機でトライしてみたが、じっくり対峙する気になれず、あっさり流してしまった。きっちり仕事する人だな、という印象しかもてなくて…。滑らかだが、爽快な心持には浸れなかった。
ラヴェルを聴いた時と同じ感想。ラヴェルがお家芸では無い事を承知した上で、やはりきっちり演奏するイメージ以上に感想が持てなかった。
これなら、先日手放したスウィトナーのベト全のほうが好きだったかも。

もっとも自分がよく好んで聴くのは6.7.8番ばかりで、それらはクリュイタンス盤の印象が強い。8番の無難ささえも滋味を感じて、なかなか他を受け付けないようなのだ。
このカラヤン、クリュイタンスのSACDが出るまで、両者が録音年の近いBPOの響きゆえ繋ぎとして嗜む程度にとどまりそうな感じだ。

いまきくトラヴェローグ

発売当時に買ったままろくに聴いていなかったジョニ・ミッチェル'02年作『トラヴェローグ』をあらためて聴きました。
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これの前作のジャズ・スタンダードを中心としたカヴァー集『Both Sides Now』を気に入っていた延長で買ったのですが、同じオーケストラ・アレンジでも彼女自身の作品のセルフ・カヴァーとあっては、どうしてもオリジナルのバンド・サウンドのイメージがまとわりついて、(「サークル・ゲーム」を重厚なオーケストラで聴くのは、なんだかなぁ)などと放置してしまったのでした。

最近、自分の耳がオーケストラ慣れしてきたのか、今ではとても自然にきれいに聴ける。発表当時、絶賛されていたわけがやっとわかってきた(遅すぎ)。オケとヴォーカルのバランスがとても心地良い。60分強の2枚組。こんな企画が出来るシンガー&ソングライターは彼女だけじゃないでしょうか。
ゲストのソロ・プレーヤーはハービー・ハンコック(pf)、ウェイン・ショーター(sax)、ビリー・プレストン(B-3)ほか。

「サークル・ゲーム」など、いわゆるフォーキーな曲はスタンダード風にコード変更している。エンディングのクライマックスに向けて盛り上がるタイプの曲は、バンド・アレンジに較べると苦しい部分もあると思うが、下世話にはならず、上質なトーンを維持している。

彼女のアルバムを集めるようになったのは、現在のしわがれ声に変化してからで'70年代の頃のヴォーカルは白人の普通のお姉さんみたいに感じて、今でもほとんど聴いていないまま。
それなので本作カヴァーでも『ナイト・ライド・ホーム』『風のインディゴ』あたりの選曲が馴染みある。メドレーに加えられた「アンチェインド・メロディ」のショボショボした掠れ声など、味わい深くていい。
→チェロキー・ルイーズ

届かぬ手紙

このアルバムはまだ記事にしていませんでした。カーリーの'94年作『届かぬ手紙/LETTERS NEVER SENT』。
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カーリーの新作はいつも待ちきれなくて輸入盤でいったん購入しておきながら、やはり解説と対訳が見たくなり、後で国内盤を買い直すという事を繰り返していました。
本作は、国内盤のみトラック(1)のイントロの前に、もう一つのイントロが追加されています。既に廃盤だと思うので、BMGビクターの対訳から、カーリーの挨拶文をここに引用させていただきましょう。

"一年とちょっと前、春の大掃除をした時にクローゼットの上で古い手紙の入った箱を見つけました。手紙に目を通しながら、もしもこの手紙を出していたら私の人生はどうなっていたのだろうと疑問に思ったのです。その後、何通かを曲にしてみようと、こちらに韻を加えたりあちらから名詞や動詞を削除したりして、感情に心地良いリズムをつけていきました。
結果はたいへん個人的なアルバムとなりました。どの歌も本来の設定を失うことなく、しかも不自然にならないよう新しい手紙に古い手紙をとけこませたつもりです。
いまは興奮しながらもへとへとで満ち足りていて、言わせてもらえるなら自分のことながら誇りを持っています。"

ジャケットのコラージュにはおそらくJTの写真も。
曲間の切れ目なく、連作のように音楽が紡がれていきます。
彼女のアルバムの中で、ヴォーカルのポテンシャルを出し切った、最後のロック・アルバムかもしれません。

(3)「ロスト・イン・ユア・ラブ」は、久々にアリフ・マーディンと組んだ、シャッフルの大バラード。振り絞るようにシャウトするヴォーカルから、愛の苦しみが切々と伝わってきます。
(4)「ライク・ア・リバー」はおそらく彼女の母の死後に作られたものではないかと。自分も片親を失くしてこの歌が他人事では無くなった。

"お母さん、いさかいは終わり
あなたの家は売りに出ています
形見の懐中時計は
私たち4人で分けました
誰が真珠をもらうかで
姉妹たちとけんかもしたけれど
それは私たちの欠点をさらけだす
暗喩にすぎませんでした
部屋が空になるにつれ
若かった頃のあなたの顔が浮かびます
裏口には使いこまれた石段と
あなたの入れる光のたまり場があります
(後略)"

(5)はPVもかっこよかった「太陽にむかって」。NYCのグランドセントラル駅ライヴのオープニング曲でもありました。
(8)「ハーフウェイ・ラウンド・ザ・ワールド」は、タイトルが示す通りエスニックでユニークな自作曲。ブルースっぽいハーモニカが活きています。
(13)「ブレイク・マイ・ハート」は、男女の冷たい会話を描いた。ラストのフレーズは、"呪われたまま新しい恋を探してる/またしても冷たい心の持ち主と"

モントゥーのダフクロ

デッカのBOX、や~っと一通り聴き終えました。ほとんど流しただけで、ちっとも聴き込めていませんけど。
ravel

クラシックに詳しくないですが、このBOXはなかなかに幅広く選曲を散らしているんじゃないでしょうか。現代音楽など、自らチョイスする機会がないので、良かったと思う。でも、メシアンとか自分はだめみたい、ついていけない。

一通り聴く中でハッとしたのが、初めて聴くピエール・モントゥー&ロンドン交響楽団のラヴェル「ダフニスとクロエ」。これ、すごくいい。
ラヴェルのオーケストラは何がなんでもクリュイタンス、と思いこんできた私ですが、これはモントゥーに軍配が上がった。今まで意識していなかったフレーズがあちこちから聴こえてくる。

なんでもモントゥーが、このバレエ音楽全曲の初演指揮を担った(1912年)そうで、この'59年録音の圧倒的な咀嚼・把握力にも頷ける。気品と奥行きがあり、これを聴くとクリュイタンス盤がやや表層的だった気がしてくる。演奏の物語性が強く、今までやや敬遠してきた作品だったのが一転して聴き込みたいと思うようになった。本当に同じ曲でも全然違います。

この録音、ユニバーサルから最近SACD化予定だったのが、発売中止になってしまいましたね。マスターテープの問題かな。

エラのSHM-CD

クチナシの鉢植えが季節につれてイキイキしてきました。わりと育てやすいです。

過日、感想を書いたエラのSACD『ライク・サムワン・イン・ラヴ』ですが、また買い直しました。
SACDの音がどうしても馴染めなくて。オーディオ環境が優れていればいいのだけど、他と較べ合わせてもやはりヴォーカルがきつい。特にサ行とか。
通常はここまで拘らないんですが、本作ばかりは愛着があるだけに何とかならないものかと。
ella

そこで、通常CDの現況をもう一度調べ直してみました。今春にユニバーサルからリイシューされてる。
当初自分が持ってたCDは、ポリドール発'90年盤。たぶん初CD化のものと思われますが、この時代のアナログ初CD化の音質は平板で、いかにもコピーしたかのような浮いた感じだったので、そのあたり、改善されているかメーカーに直接問い合わせてみました。

すると、音源自体は変わらないが、2005年に採用したルビジウム・クロック・カッティング方式と、SHM-CD化によって、音質向上しているとのこと。つまりカッティング法、素材の変化により、リマスタリングは施していないが、高音質らしいのだ。

早速、聴いてみたがこれが自分には合ってる。SACDでは遠近感の極端なメガネをかけてるみたいだった。録音そのものが旧いので、無理に各音色の輪郭を取り出さないほうが、この盤には合ってる。まぁ、カッティング方法が良いのか、SHM素材がどの程度良いのかまでは、私の耳では分かりませんが。
残念だけどSACDは早速中古に飛ばしました。高名なエンジニアの手によるもので、ご自身も作品に愛着あるそうなのだけど、ちょっと一連のヴァーヴのシリーズは購入を見送ろうと思う。

'72年のディースカウ

ついにディートリヒ・フィッシャー=ディースカウのユニバーサルSACDを購入。難波まで行ったのに品切れ、結局通販で買った。
'72年録音『シューベルト歌曲集/白鳥の歌』です。伴奏はジェラルド・ムーア。
dieskau

高い金出して、ショボい音だったら許さん~、という意気込みで、いざ再生。
うわー、きれい。ピアノの音が程良い残響を含んで、とても澄んでいます。続くディースカウのヴォーカルもきれいに録れている。初めて購入した作品だが、きっとCDではこれほど再現出来なかったに違いない。

帯の背面には"ストレスなく耳に届くスケール感、柔らかでアナログライクな質感、眼前に繰り広げられる実在感、空間の奥深く展開する立体感、どっしりと引き締まった安定感…"とあるが、まさにその通り。特にアナログ的な魅力は大きい。CD化以降は、なんとなく諦めていたから。

dieskau
ただただ、歌の中にいる感じ。声質は微妙にEMIモノラル時代の若い頃のほうが好きだがもちろん遜色はない。全曲憶えられるほどになったら、かの『冬の旅』も検討したい。ユニバの購入はディースカウでうちどめにしなければ(笑)。

↓(再掲)最も思い入れある第5曲「すみか」(詩、レルシュタープ)。コーダに付け加えられた最後の旋律がまたハートフル。

1日1曲(33)

きのう、ユニバーサルSACDを初めて購入するつもりで最寄りのあべのタワレコに行ってみたが、取扱い店ではなかった。今日、難波に行って現物を手にとってから決心するつもり(笑)。
なんか大袈裟だけど、音楽ソフト一枚に4500円もかけたことないんでね。'80年代にCBSソニーから出たマスタリングLPを3500円で買ったのが過去最高値だったと思う。

フィッシャー=ディースカウ/シューベルト歌曲/捕らわれの狩人の歌
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前奏から鮮烈、「森」「塔」「猟犬」「城壁」などをキーワードに狩人の孤独が、彼女への思慕の記憶を連れて、暗い幽玄の中へと溺れていきそうです。

EMI SACDのおさらい

昨年暮れ頃からリリースが始まったEMIの一連のSACDから、ここで作品・演奏・音響合わせてお気に入りのアイテムを挙げてみます。
いまのところ日EMIからはおよそ10アイテム、英Signatureシリーズは全点を購入しています。

(1)マルティノン&フランス国立放送局管弦楽団/ドビュッシー/管弦楽曲集(4SACD)
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さすが'70年代録音だけあって、リマスタリングの成果は素晴らしいものがあります。最近の自分の嗜好がフランス系ということもあって、お気に入りです。
特にタンバリンやトライアングルなどの"シャラリン"系の音が抜群にリアルで、キラキラしている。こうした小物を含めたパーカッションの多用は近代音楽を聴く愉しみでもあります。目下、「小組曲」が全曲大好きで、よく聴いています。
変な譬えかもしれないけれど、ちょっとエンヤのようなサウンドの壁に似ている。カステラのような柔らかい厚み。SACDを聴く悦びがここにあります。

(2)クリュイタンス&パリ音楽院管弦楽団/ラヴェル/マ・メール・ロワ、高雅にして感傷的な円舞曲
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オーソドックスなのになんでこう色気があるんだろう。奇を衒わないのにカッコイイ指揮&演奏です。「高雅にして…」冒頭の華麗かつドシャメシャな煌めきがいい。バラ売りの他のラヴェル3作ももちろん好きですが、アイテムとしてまとまり感は、これがベストだと思う。
(「ボレロ」がちょっと惜しいんですね。全体的な気品と色気は抜群なのだけど、スネアがソロに合わせ過ぎなのか、リズムがもたれがち、終盤では管がヘロヘロになってる。それでも最後、ダメ押しのドシャメシャで締めるところは締める(笑)。)

(3)オイストラフ、クリュイタンス&フランス国立放送管弦楽団/ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 
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これも'08年のリマスタCDとは較べものにならないくらい本来の鳴りが聴こえてくるようです。過去盤でさえ音楽的な魅力を嗅ぎ取っていた自分を慰労したい。もう妥協しなくていいよと。
この曲は、現代ではもっとさらりと滑らかに演奏する傾向にあるみたいですね。それだけにこちらの荘厳たっぷりで甘やかなヴァイオリンの音と、パテ埋めのようにツボをしっかり押さえたオケ伴奏が、アナログ感の厚みを湛えて充実して響いてきます。

(4)フィッシャー=ディースカウ、ムーア、エンゲル/シューベルト歌曲集(4SACD)
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SACDはヴォーカルにも威力を発揮しますね。声楽に興味がなかったのですが、モノ(一部ステレオ)ながら生々しい歌声と、長短を巧みに入れ替えながら四季おりおりの情感のこもった楽曲の虜になりそうです。ムーアの伴奏も素晴らしい。
ホレボレしながら聴いているが、但し一部音割れがあるので、この際、ユニバーサルからの'70年代録音による通しの歌曲集を新たに買おうかと思う。ついに4500円を財布から出すかどうかというところ(笑)。

デッカ・サウンド

デッカの55周年を祝って昨年リリースされたという50枚組CDボックス『THE DECCA SOUND』を購入しました。
decca
クラシックはCDではもう聴けない、などと書きました。が、
・アンセルメ指揮、ファリャの「三角帽子」のSACDが聴いてみたい
・しかしユニバーサルのSACDは高額である
・しょせんクラシック初心者じゃないか
・「三角帽子」はCDにしよう
・でも単品買いはチト物足りない
・偶然、「三角帽子」を始めとするデッカの豪華CDボックスが目に飛び込んできた

オリジナル・ジャケが復刻されています(自分には初見ばかりだが)。手持ちダブリはシフとデュトワの一部だけ。デッカって、潜水艦の開発から録音技術を獲得したんですね。
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50枚聴くまで記事が書けなくなるので、ひとまず一番目当てのアンセルメ&スイス・ロマンド管弦楽団の「三角帽子」を聴いてみました。ファリャのスパニッシュ・テイストたっぷりなこのバレエ音楽、先にシャルル・デュトワで聴いていましたが、録音年の古いこちらのほうが迫力と聴き応えがあります。さすが初演から立ち合ってきただけの貫禄があります。音、いいですね。ちなみに初演時の舞台・衣裳デザインはピカソ。
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→他の演奏による「三角帽子」

以降も興味深いライン・ナップ。また追って軽く記事にします。

今日は赤と青の日なのか? 外に停まってる車まで…
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 シャケ/YASUHISA

Author: シャケ/YASUHISA
男性 昭和40年代生まれ

愛猫カオ(ロシアンブルー)と同居
常にマイブームがないと生きていけない

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