ドリスの勘のよさ

『サイコ』に続いて、'56年『知りすぎていた男』を再見しました。主演はジェイムス・ステュアート、ドリス・デイ。
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『知りすぎていた男』はイギリス時代の'34年ヒット作『暗殺者の家』のリメイク。典型的なスパイと誘拐がらみの活劇(以下、ややネタバレ)あり。
嫁さん(ドリス・デイ)の勘は正しかった。医者である旦那(ジミー・ステュアート)が出自を喋りすぎたために、諜報部員に仕立てられてしまった。

音楽は常連のバーナード・ハーマン。指揮者としても出演している。ジミーの最初のほうのアンプローズ・チャペル訪問のシーンの不安を想起させる和音進行は、数年後の『めまい』の予兆を思わせる。

メイキングでは、ドリス・デイの起用はヒッチの提案らしいが、制作陣は当初、彼女の演技力に懐疑的だった。しかし、見事に母親の役を演じ切ったと。たしかに彼女の美しいブロンドと母性のバランスが絶妙でした。

ドリスの歌は大好きなんですが、映画は未だ本作しか知りません。初見では、主題歌となる「ケ・セラ・セラ」が歌われるシーン、大使館の来賓が怪訝な顔で見合わせるのには、てっきり(ドリスの歌がヘタなんだな)と捉え違いしてしまった。これは同じ館に閉じ込められている息子に宛てて必死に振りしぼって歌う母のメッセージだった(のですよね?)。
ドリスは動物愛好家で、このモロッコ撮影時も「動物にえさを十分与えない限り、動物との撮影は嫌だと言った」という。

↓本作で「ケ・セラ・セラ」を歌うドリス・デイ

初めてトイレが映った映画

ヒッチコックの『サイコ』(1960)を再見しました。画像は7作品収録のDVDボックス・セット。
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『サイコ』との出会いは、自分が高校時代、深夜TVでラーメン啜りながらこの作品を(白黒だし古臭いドラマかな)くらいに、ボンヤリ観ていたら、俄かに序盤からの流れを寸断する展開となり、目が離せなくなってしまった。怖い。面白い。

ドンデン返しの結末を知った後でも、細部に渡って観直す楽しみが残されている。偶然かと思われたシーンの作り込みは、総て意図した演出であると今さら確信していく。構図が完璧な絵の連続のよう。
名演はアンソニー・パーキンス。彼が屋敷の階段を上がるシャナリとした動作ひとつとっても、その後の伏線となる事に気づく。

メイキングによれば、この作品はトイレが映り込んだ史上初めての映画だそうだ。映画はお客に夢を見させるものだったからだろう。(なぜか、まばたきをしないアイドル時代のいしだあゆみを思い出した。)
またジャネット・リーのブラジャー姿も当時としては刺激的で、検閲の懸念が付きまとったという。今じゃ信じられないね。

監督の死後、別の監督による続編「サイコ2」は、意外に楽しめたが、話の辻褄合わせに奔走した感も否めない。その後の「3」以降は駄作だった記憶がある。
また、ガス・ヴァン・サント監督の'98年カラー・リメイク版も公開当時観たが、焼き直しの意図が理解出来なかった。
ヒッチコックは目線に詳しい人だ、とあらためて思った。

↓バーナード・ハーマンによるテーマ音楽。映像はシーンを編集したものでネタバレありですので未見の方は注意。

梅雨のポール・ウィリアムズ

初めてポール・ウィリアムズのCDを買いました。オーストラリア盤ベスト。
出来ればオリジナル・アルバムから欲しかったけど、初心者ですので。

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こういう感じの人、日本の女の子で見かけそうな。元来、役者さんなのですよね?
先日、バーブラ・ストライサンドの「スター誕生愛のテーマ」をピックアップした事、'70年代興味が再燃した事もあって、今回の'70年代ベスト。
ポール・ウィリアムズをまともに聴くのは、初めてなのですが、ニルソンに近しい感じもしますね。実際、友情関係だったようです。
ニルソンは奇想天外な諧謔性のイメージが強いが、ポールは普遍的なラヴ・ソングの印象。A&Mサウンドに乗って感傷的に震える甘いヴォーカルが聴ける。

この時代はドラッグにまつわるエビソードが多いですね。レココレ増刊のSSW特集を読むと、ポールは「華やかな活動状況とは裏腹に、ドラッグとアルコールにむしばまれ、(中略)アリゾナの大学でコンサートを開いた時、狂ったように暴れまくるウィリアムズを周囲は驚愕しつつ見守るしかなかった」という。'97年の復活まで実に16年のブランク。

↓カーペンターズのヒットで知られる
We've Only Just Begun

↓タイトルだけでイメージが湧きそうです
I Won't Last A Day Without You

かわいらしいThe Logdriver’s Waltz

こちらは、ケイト&アンナ・マッガリグルのケイトの死後、'10年に発売された未発表集『ODDITTIES』。
先日書いた3枚組新作の既発表曲デモ集と異なる、新曲中心の模様。
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姉妹の簡素な弾き語りが中心のララバイ集かと思いきや、バンド演奏も多い。
恐らく、長期間におよぶ多方面での単発のスタジオ・ワーク集(ライヴ・テイクも1曲)なのだろう。自作のほか、フォスターなどの曲も演奏。
それだけに音質感は多少まちまちだが、不思議とアルバムとしての統一感はある。

なんやかんやと姉妹のアルバムは、これで全揃え。唯一、廃盤のままの『Pronto Monto』だけ未入手だが、なんとGroovesharkで聴けてしまうんですわ。ちょっとポップ寄りで、この姉妹らしくない面も。

↓『ODDITTIES』から、丸太運び人を歌った「The Logdriver’s Waltz」のアニメが愛嬌もの。

サイモンの初期2作

ps
ポール・サイモンのソロ・アルバムの中から、ネット試聴しまくって、特に聴いてリッチな気分になれた'70年代の2作品を最新リイシューを機に輸入盤で購入しました。
ちなみに以降のアフリカン&ブラジリアン音楽を取り入れた作品には、今のところ関心が無く。今年の最新作も試聴してみましたが、超越したミクスチャー感覚に少々うろたえ。

今日、届いたばかり。よっていつも通り軽い(薄い)レビューでご容赦を。
単純に楽しめたのは'73年作『There Goes Rhymin'Simon』。邦題は『ひとりごと』。このアルバムを聴くのは、この機会が初めて。
フォーク、ゴスペル、ジャズ、ロックンロールなど幅広い音楽を含んだアメリカン・ポップ絵巻のような、ジャケットそのままのカラフルな楽しさ。
(ロックといっても、当時のロック・ファンは、彼のことを大向こうに捉えていたんじゃないか、という気もしますが。)

ニューオリンズ風のブラスやゴスペル・ハーモニーが楽しい。トラックの半分はアラバマ州のマッスル・ショールズ・サウンド・スタジオでの録音だそう。
Tr.6「アメリカの歌」が、それまでの軽やかさから、S&Gのような内省的なフォーク・バラードに。ネットで訳詞を探したところ、結構シリアスなんですね。こういう歌を知ると、アメリカ人って、別に野蛮でも単純でもないじゃないか、と思うのですが。

↓いま、この曲が好き
Tr.3 Take Me to the Mardi Gras

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1曲目からグッときて購入決意したのが、'75年作『Still Crazy After All There Years』。邦題は『時の流れに』だったかな。
ご存知、フィル・ラモーンとの共同プロデュース。行った事ないけどニューヨークのまどろみの風景を思い浮かべるような、上質なバンド・サウンド。Tr.6は最近亡くなったフィービ・スノウがヴォーカル参加。

この作品、後半からなんだかモヤモヤしてきます。この感じ、
ジェイムス・テイラーの『Hourglass』と似ている。奇しくも両者ともグラミー受賞作。AOR的な感覚が中だるみを感じて、少しもたれる。彼らの出自がフォークであるという、こちらの先入観がいけないのだろうか。
今回購入の2枚はリマスター盤で、音圧はあまり高くなく、飽きない塩梅になってると思います。

↓表題作
Tr.1 Still Crazy After All These Years

ドロレスのベスト盤

ドロレス・ケーンのベスト盤は、手持ちでは以下の2種類。他、もう一種類くらい発売されてたと思います。
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ドロレスの来阪ライヴは返す返す残念だった。その前日か前々日の東京ライヴは良かったらしいのに、何故急に声の出が悪くなってしまったのか…。
以来、彼女の黄金の声は聴かれなくなってしまった。民謡歌手だから喉を酷使した結果とぼくは捉えていた。だがドロレスのCD販売を日本で扱っておられるMUSIC PLANTさんとTwitterでやり取りしたところ、アルコールが原因なのだそうだ。でも現在は元気ですよ、とのこと。

画像左の『ザ・ベスト・オブ・ドロレス・ケーン』では、16曲のうち過去の代表曲4.5曲ほど、新録に差し替えられているが、喉がつぶれて精彩を欠いてしまっている。録音時期のクレジットをいちいち確認しなくても、聴けばすぐ分かる。ヴァン・モリソンのヒット曲「Have I Told You Lately」のカヴァーもいまひとつ。
ただ、同時に音楽性まで失われることはなく、元夫ジョン・フォークナー作による(15)「A Place In My Heart」などは、しみじみとしていた。

ドーナル・ラニーのプロデュース等、ヒット性を重視したチョイスより、画像右『モア・オブ…』のほうが、掘り出し物っぽくピュアで巧まずお薦め。といっても、やはり新録で追加されたピート・シーガーの「花はどこへ行った」など、やや残念な仕上がり。本当にヴォーカルものは難しい。

ベスト盤だけあって、デ・ダナンなど様々なコラボが楽しい。そのデ・ダナンとのライヴ曲「ランブリン・アイリッシュマン」を聴くだけで、往時の歌のうまさを堪能する。

↓『モア・オブ…に』収録
Tonight As We Dance

トンプソン親子

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トラッド、フォークが好きと言いながら、ブリティッシュ・フォークにはほとんど縁が無く、手持ちはサンディ・デニーとジューン・テイバーばかり。

リチャード、リンダ、テディ・トンプソン親子のアルバムは、画像の各1枚ずつだけ。
初めて買ったリチャード・トンプソンのCDは、エレキ系だった事もあって、随分前に売り払ってしまった。
今回の'05年作「Front Parlour Ballads」は、アコースティック。ネット試聴して気に入った。パーカッションのドライな質感が気持ち良い。といっても大掛かりなバンド・サウンドでは無く、大半はギターの弾き語り。
弾き語りなんだけど、マジカル。ギターの巧さは有名だが、この人のヴォーカルって色気あるんですよね。メアリーもBBCのBringing It All Back Homeで共演した際、「とろけちゃいそうだったわ」とか言ってたっけ。尤もプレイ全体に対する魅力だと思うが。

Tr.1 Let It Blow

実はリンダについては、ヴォーカルが苦手なんです。なぜか聴いてるうち、不安定な居心地になってしまい、画像の国内盤ベストはほとんどリピートしていません。カレン・カーペンターにも、似た感覚を持ってしまうのです。

リチャードの息子と知らず、気に入って買ったのがテディ・トンプソン。彼の歌声は映画『ブロークバック・マウンテン』で知り、リンダ・ロンシュタット、エミルー・ハリス、彼と恐らく同世代のルーファス・ウェインライトらが参加するサントラの中で、彼のトラックは何度も聴いた。
鼻にかかった感じは親父さんと似ているが、非常にセンシティヴでクセがないヴォーカル。かつ甘さも持ち合わせて、女性ウケもしそう。手持ちのアルバム'05年作『Separate Ways』は、ソフト・ロックの質感で個人的にこれという一曲はないが、自分にしては珍しく、若いアーティストの中で今後の活躍に期待したいと思った人。

Tr.3 Everybody Move It

ケイト&アンナ動画集

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(Kate & Anna McGarrigle 公式サイトより)左がアンナ、右がケイト

ケイト&アンナ・マッガリグルの最新3枚組アルバム『Tell My Sister』の目玉になっている
Disc3の未発表デモ集は、ほとんど彼女達のピアノとギターのみを中心とした、素朴だが臨場感のある充実した21曲。
ラスト2曲「ハート・ライク・ア・ホィール」と「メンドシーノ」の別テイクが、ちょうどアンコールみたいな構成になっている事に気づいた。こちらは本編テイクよりアンナのヴォーカルがエキサイトして、感情的でアンコールさながらなのだ。
また、「メンドシーノ」のラストのサビが転調してキーが上がっている。この曲はサビ部分の音域が低いので、盛り上げる工夫をしたのだろう。こうしたテイクの微妙な違いが、オリジナル盤に馴染んだ耳にはとても新鮮。

さて、独り興奮冷めやらぬ状態で、この姉妹のシャケ自選の動画3点を紹介しましょう。

①メンドシーノ
これは過去に紹介済みですが本当に美しいので再度。Transatlantic Sessionsからの映像。ソフト化されているんですね。歌い切った時のケイトの表情がいいです。
ハーモニー・ヴォーカルの赤いブラウスの女性は、カレン・マシスンですね。


②ゴー・リーヴ
ケイトのギター弾き語りによる自作自演。


【出ていって
彼女は私よりいいのね
少なくともずっとしたたか
彼女ならもっと長く続かせられるでしょう
良かったじゃない
(中略)
私たちがよく笑った日々のことを
思い出す
あまり良くなかったことは
すぐに忘れてしまった
私たちは言葉が耳から溢れてくるほどになるまで
じっくり話し合うことができた
何日とか何週間とか何ヵ月というんじゃないの
何年もの間ずっとよ
だけど ほらやって来た
ほら涙が溢れてくるのよ
(後略)

(ワーナー国内盤対訳より引用)】

③Better Times Are Coming
フォスターの曲。ケイトの息子、ルーファス・ウェインライトとアンナの夫(?)が一緒に歌っています。
ルーファスはデビュー前ですね。素朴な青年がバスローブを着て歌うようになるとは!

Dancer with Bruised Knees

最近、Groovesharkのウィジェットを使っていますが、スキンがなかなか反映せず何度もリロードしないといけないのでイマイチ。なので参考音源はURLコピーに戻します。

k&a2
ケイト&アンナ・マッガリグルのことが頭から離れなくて。先日紹介した3枚組『Tell My Sister』アルバムの記事は、ファースト中心の言及だったので、セカンドからも少し。
しかし、器用な姉妹ですね。ギター、ピアノ、バンジョー、ボタン・アコーディオンを弾きこなす。強いてどっちが変な声かと言えば、姉のアンナじゃないかな(笑)。独特のビブラートがかかる。

セカンドは、ファーストに較べるとホーン・セクションが大幅に外れたせいか、一聴したところ地味めの印象だったが、かえってフレンチ&トラッドの香りが高い感じ。とにかく、フォークっぽいなと思えば、意表をつくメロディ、コード展開がちょこちょこあって、只者じゃないと気づく。

【Tr.9 Naufragee Du Tendre (Shipwrecked)

アイリッシュ系フレンチ・カナディアンの姉妹は、ザ・チーフタンズのクリスマス・アルバム『ベルズ・オブ・ダブリン』でも共演しています。彼女達の歌声を知ったのは、このCDが最初だったと思う。
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(画像はAmazon USから)

Tr.4 Il Est Ne': Ca Berger

MM誌の最新号で、姉妹の記事を立ち読み(セコい)したところ、未発表デモはまだまだあるそう。ひとまず、'10年にリリースされたという未発表曲集を現在取り寄せ中。いずれ軽く記事にします。

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 シャケ/YASUHISA

Author: シャケ/YASUHISA
男性 昭和40年代生まれ

愛猫カオ(ロシアンブルー)と同居
常にマイブームがないと生きていけない

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