真冬の気分の反映

neko011217

パナライカの12-60mmのズームレンズの国内発売が予告されました。やはり10万はくだらないのね。そうだろうとは分かっていたので、型番は古いがパナライカの単焦点の比較的手頃なレンズを買うことに。これでパナライカはやっと2本持ちになる。超望遠とかも写りよさそうで欲しいなぁ。望遠は要らないと思ってたけどさ。



これは、長い間レビューが書けませんでした。ジョニの『テイミング・ザ・タイガー』(1998)。同時期に発表されたライヴ映像作品のレビューで触れたように、このころのジョニのギターの音色が好きでなく、本アルバムもたまに取り出して聴く程度だった。
が、今回の寒波に滅入った気分でなんとなく手を伸ばすと、やはりカナダ、しっくりくる。ジャケは夏のポートレイトだけど。真冬の鬱屈した気分を、克明に描画する賢者の意識がストーリーにのって歌われる。苦手だったギターの音が、暖炉の火のように感じられた。

ジョニの映像作品

発売当時、入手していたジョニ・ミッチェルのライヴDVD『ジョニ・ミッチェルの肖像』(1998)。
joni

『シャドウズ・アンド・ライト』に続く、二番目のライヴ映像作品ですね。『シャドウズ・アンド・ライト』は、DVDリイシューされた際、入手したんだけど、映像が思ったより垢抜けない印象で、早々に手放してしまった。今ならCD盤で買い直してもいいかなと思う。

本作のほうは、アルバム『テイミング・ザ・タイガー』発表後のライヴにあたる。ドーム型のスタジオに、ステージを取り囲むように、色とりどりのソファが並べられ、壁にはジョニの絵画作品が並べてある。
今の感覚で観直すと、こんな解像度の低い映像だったとは。買ったときには、最新映像の手ごたえを感じたのにねぇ。現在、海外盤のみBlu-rayリイシューされているようです。

jonilive本ライヴでジョニは恐らく『テイミング・ザ・タイガー』と同じギターを使用していると思うが、このギターの音色が、未だに僕は好きになれないようだ。暖色系なんだけど、ペラペラしているというか。
そして、彼女のギター演奏、やはり変則チューニングとみえて、どれも見た事もないコード押さえのフォームばかり。この件は、過去のレコード・コレクターズ増刊『シンガー・ソングライター』特集号にて、和久井光司氏の興味深い記事があった。
【ジョニのオープンチューニングは、バーで押さえるコード・フォームを嫌うことから始まったものだろう】。だが、本ライヴ映像でのジョニは、既にバレー・コードを軽々と弾きこなしている。
【彼女はおそらく、早い時期にチューニングを変える手法に気づいているし、我流でどんどん変則的なそれを発明していったのだ。その結果、彼女が好む、ジャズっぽい、コンテンポラリーなコードを開放弦で作っておいてから、メロディを決めていく作曲法が生まれたのである。】(レコード・コレクターズ2010年5月増刊号より引用)

開放弦を重用した分数コードに新味を感じつつ、ライヴ終盤近くでハンド・マイクで歌われる他人曲のカヴァーに、緊張が解けるようなリラックス感を得られるのも正直なところ。フランキー・ライモン&ザ・ティーンエイジャーズの「ホワイ・ドゥ・フールズ・フォール・イン・ラヴ」などイキイキとダンスする彼女に、少女時代のバックグラウンドを窺わせる。

この汽車のように

夏草の誘い

hissing

【国内盤曲目】
1. フランスの恋人たち
2. ジャングル・ライン
3. イーディスと親玉
4. 悲しみはともだち
5. 美しい誘惑者
6. 夏草の誘い
7. ボーホー・ダンス
8. ハリーの家/センターピース
9. スウィート・バード
10. シャドウズ・アンド・ライト

気が付けばジョニ・ミッチェルのスタジオ・アルバムは全て手元に揃った。しかし、まだごく一部しか聴き込めていない。
'90年代からジョニの音楽に触れ始めた自分は、去年出た『Love Has Many Faces』が、年代別の分け隔てなく彼女に近づける良い機会になった。いわゆるヒット集とは一線を画したテーマ性に基づく選曲・編集が、特に僕が苦手とする'80年代からのチョイスもストーリーを読むように入り込めたのだった。もちろんリマスタリングの功績も大きい。

数年前に入手したジョニの初期アルバムのボックスセットから、『Court and Spark』の次に少しずつハマッているのが次作の『The Hissing of Summer Lawns』(1975)。
インナー・フォトの、プールに浮かぶビキニ姿のジョニに、ユーミンのアルバム『ボイジャー』のインナー・フォトが重なった。やはりユーミンは、ジョニの影響を受けてそうだ。

最初に聴いた時は謎だった。どういう意図で作られたのか理解できない。だが不思議な清涼感が残る。
幕開けに相応しい(1)は、グラハム・ナッシュ、デヴィッド・クロスビー、ジェイムス・テイラーと、歴代恋人(?)がコーラス参加。アルバム全編通しても、僕が明快なサビ部分を感じたのは、この曲だけ。

以降は他のアーティストでは聴いたこともないような展開だ。アフリカン・リズムの(2)は、もう少し華のあるアレンジでも良かったと思うが、繰り返し聴くと欠落した和声が、自分の耳の裏から一斉に溢れ出てきそうな、そんな想像力をもたらす。意外とメロディアスなのだ。

難曲なようでも、いわゆる歌曲としての一番、二番があるので、構成上はけして前衛的でもない。(8)は組曲風で、ジャジーに変貌する予感がスムーズで素敵。もはやルートのコードだけでは収まらない、ジャズ寄りの和声感覚がアルバムを独特なものにしてる。

エレピやホーン、ギターのカッティング、印象的なエフェクトがまどろみの中で輝き、こだまする。クールでありながらプリミティヴ。1975年に、こんなことやってたのか。解り出すのが遅すぎる。

#1 https://youtu.be/sEgcHrbyTgk
#6 https://youtu.be/ejORU9R3rAo

ゲフィン・レコーディングス(2)

このジョニのボックスセット(2003年発売、現在廃盤)のリマスタリング・エンジニアのクレジットが見当たらないのだが、たぶんバーニー・グランドマンだと思われる。ジョニのオリジナル・アルバムでは『風のインディゴ』(1994)以降、彼が一貫してマスタリングを担当している。

▼左から『ワイルド・シングス・ラン・ファスト』『ドッグ・イート・ドッグ』『レインストームとチョークの痕』
joni

全4枚につき『ナイト・ライド・ホーム』から遡って、一作ずつ記事にするつもりだったが、『ナイト・ライド・ホーム』を手放しで絶賛していたにも関わらず、残りの3枚については、どうも居心地悪く、言及することが出来ない。リアルタイムに試聴した当時と、今も感想が変わらないらしい。青春真っ只中というべき'80年代を、自分はあえて'70年代ロックに遡ったり、民族音楽に逸れたりしていた。旬を避けるかのように。

ゲフィン時代のセールスは、はっきり言って芳しくなかったのだろう。ジョニ自身もボックスの挨拶文において、【私自身80年代には同期していなかったのだ。ありがたいことに! あの時代と同期するということは、私に言わせればモラル面でも芸術面でも退化することだったのだから。】と記している。(ボックス国内盤訳文より)

気に入れないと極端に言葉数が減る僕は、参考までにジョニの公式サイト内の、ユーザー投票による各ディスクの採点(10点満点)をチェックしてみたところ、『ナイト・ライド・ホーム』がほぼ9点だが、それまでの3作は7点台と、ゲフィン前後の初期・後期リプリーズ・レーベル時代の作品と比べても、おしなべて評価が低めだ。

この3作品、それぞれ音の感触は少しずつ変化しており、この時代がどのアーティストにとっても模索期であったことが窺える。『ワイルド・シングス・ラン・ファスト』(1982)は、まだ『逃避行』の頃のバンドのニュアンスを継承しているが、『ドッグ・イート・ドッグ』(1985)において、トーマス・ドルビーを迎えた典型的な打ち込みサウンドに変化。さらに『レインストームとチョークの痕』(1988)では、'80年代後期らしい進化が見て取れるポップスになる。

昨年出たバレエ企画ボックスと、遡って中古入手した本ボックス、いずれのライナーノーツを読んで驚くのは、ジョニのような大物でも、バンド人選やレコード会社に対し苦労や闘いを余儀なくされていたことだ。彼女は、このゲフィン・レコードが売却される際も、自力で4枚の権利を取り返し、最後に【さぁ、そして、広く認知されることなく12年の刑に服した後に、ゲフィンの地下牢から飛び出してきたのが、仮出所のこの4人である。】と結んでいる。(同訳文より)

個人的には、ビデオ・クリップ全盛期に、ゲフィンにおいて『ナイト・ライド・ホーム』収録曲を中心としたビデオ制作がなされたのは興味深い。クリップ集はVHS発売されたが現在は廃盤、未DVD化である。

▼『レインストームとチョークの痕』より

ゲフィン・レコーディングス

廃盤でプレ値が付いていたため、躊躇っていたジョニ・ミッチェルのゲフィン・レーベル在籍時の4枚のアルバムをまとめた『コンプリート・ゲフィン・レコーディングス』BOXセット(国内盤)(2003)をついに入手。つかず離れず聴いてきたジョニだったが、こないだのバレエ4枚組を聴いてから一気に掴まれた。
幾らで買ったかは書かない。書くと「私の近所ではその半値で売ってましたよ」などと後からコメントが着きそうだから。

joni

【収録内容】
・『ワイルド・シングス・ラン・ファスト』(1982)
・『ドッグ・イート・ドッグ』(1985)
・『レインストームとチョークの痕』(1988)
・『ナイト・ライド・ホーム』(1991)
以上のオリジナル・アルバムに3曲のデモを追加

正直なところ、この年代の録音はジョニに限らず好まないのも、躊躇した理由だった。今更ドラムマシンのベッタリした音など聴きたくないし。ただ、『ナイト・ライド・ホーム』で、憑きものが落ちたように鮮烈なアコースティック・アルバムが発表され、僕はこの作品で遅まきながら彼女に魅かれたのだった。
そして本ボックスは、リマスタリングが施されているのも魅力。ヘビロテした『ナイト・ライド・ホーム』は、オリジナル発表盤の痩せた奥行きに欠けた音質から、見事にクオリティ向上。これだけでも買った甲斐がある。もっと早く買えば良かったのだ。

今届いたばかりで、まだこの一枚分を聴いてるだけなのだけど、このボックスもジョニのライナー・ノーツや各曲のコメントが付いていて分厚いのだ(『ナイト・ライド・ホーム』発売時のビクター国内盤は対訳が無かった)。

その愛着あるアルバム『ナイト・ライド・ホーム』から1曲取り上げたい。ラストトラック「トゥ・グレイ・ルームス」は、ジョニが持っていた歌詞がまだ無いピアノ曲に、バンド・メンが即興で対応したらしい。秘めやかなイントロから歌唱への流れに意外性があって、しかもさり気ないのだ。

【誰も知らないの、私がここにいることを
ある日、姿を消したきり
ここに2つ、灰色の部屋を取ったのよ
ここなら見えるから
あなたが歩いていくのが
私の窓の下を】(対訳より一部引用)

この詞について、昨年発表された『Love Has Many Faces』のライナー・ノーツでは、着想についてこう綴られている。
【私が見つけたストーリーは、一風変わってはいるが実際の話だった。ドイツ人貴族で同性愛者の男性には、長い間忘れられない若かりし頃の恋人がいた。その元恋人とは長いこと音信不通だった。そしてどういうわけか、その貴族は彼を再び見つけたのだ。元恋人は港で働いていた。ヘルメットをかぶり、弁当箱を抱えていた。貴族の男はおとぎ話に出てくるような豪邸を出て、通りに面した灰色の2 部屋を借りた。そのみすぼらしい部屋から、元恋人が仕事に行ってはまた家路につく様子を見ることができたのだ。私の知る限り、貴族の男が彼に声をかけることはなかった。報われることのない愛の話。】(ワーナー・ミュージック・ジャパン翻訳PDFより引用)

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 シャケ/YASUHISA

Author: シャケ/YASUHISA
男性 昭和40年代生まれ

愛猫カオ(ロシアンブルー)と同居
常にマイブームがないと生きていけない

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