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2019/01/12

群像からクローズアップへ

tamade190110
Panasonic DC-G9 LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 2019.01

マレーの引退表明は驚きだったが、去年の復帰試合で随分腰回りを庇ったような動きに、これでは持たないのでは?という予測はあった。せめてウィンブルドンまではワイルドカードで出場してほしい。準優勝時のインタビューが印象的。

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roma190111

久しぶりに映画らしい映画を観た心地。ただこの作品、ネトフリ配給なので配信での鑑賞。先日ゴールデン・グローブ賞で外国語映画賞と監督賞を獲得したばかりの『ROMA/ローマ』(2018)。監督は『ゼロ・グラビティ』で知られるアルフォンソ・キュアロン。

2時間超えなので一時停止しながらの視聴だったが、あらためて通しで観たいと思う。ちょっとPCモニターはもったいないね。カメラワークが的確で、寸分の狂いもない感じ。プロの仕事だわと感心。
1970-71年のメキシコシティでの、ある家族と家政婦の関りを通して、世相を俯瞰しながら、登場人物を徐々にクローズアップしていく。メインキャストにあたる雇い主の老婦人や子供の顔がクローズアップされるのが、かなり終盤であったのが特徴的に感じた。

監督自身の生い立ちが反映されてるとのこと、人物の所作や会話から、背景が窺える細やかな描写が織り込まれ、昔の一大叙事詩でも観るようなスケール感だ。
暢気な風情に笑いが込み上げるシーンも。武道の集団稽古など変な師匠の珍技に可笑しみが。一方、家政婦クレオの彼氏の生々しい裏切り。自分語りにすり替えてトンズラする男性のやり口が、絶妙なスタンダード。しかし彼もまた世相の波に飲み込まれていたのだ。

クレオのおっとりした哀しい目つきがフィクションの時空を超えて、観ている自分にも宿るものを思い起させるかのよう。受け身的な純真さは、あの武道の珍芸を唯一果たした彼女だけのものではあったが。

2018/12/26

生き残る脇役達

airin181226
Panasonic DC-G9 LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 2018.12

同じ男優の出演作を続けて観る気になったのは、コリン・ファース以来かな。メキシコ人俳優、デミアン・ビチル主演メキシコ映画『7:19』(2016)をネトフリにて鑑賞。以下、ネタバレあり。

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demian181225

本作でビチルの出演作の視聴は4本目。かっちょいい雄姿を本作でも観れると期待。メキシコシティを襲った大地震の物語。
序盤は、大きなビルのエントランスでの出勤者達の挨拶や会話が交わされ、瞬く間に地震。
低予算なのだろう、フレームが崩れ落ちる破片を映し出し、以降、終盤までずっと瓦礫に閉じ込められた主人公(ビチル)と、ビルの老管理人の会話を中心に展開。

ビチルの決まったスーツ姿が一転、いきなり瓦礫に足を挟まれ粉塵でおしろいお化けみたいになってガッカリ。そもそももっと派手なパニック脱出劇をこちらが予想してしまったために、市街地のロケを全く映さない地味な作りにギャップを感じ落胆してしまった。
映像はビチルと管理人以外に、壁越しに聴こえる3人の声。計5名の出演者のみ。この声だけのキャストのセリフが混線して、誰の声だかも判らない。顔と声と名前が一致しないまま、早々に映らなくなってしまったから彼らに思い入れが出来ない。
しかし、それこそ現場状況の混乱を伝えるものであり、えんえん続く閉塞感と尺の長さにうんざりしたところへ、余震。さらに体と天井の隙間が狭くなる。これはサプライズ。やられた。

やり取りの中からビチルがこのビルの所有者かつ悪徳弁護士であることが解り、ビルの手抜き工事を容認したことを管理人に罵られるなど、密室劇の様相を呈してくる。
喉が渇き、小水を自ら飲み干したコップを老人から受け取るビチル。ビチルは"ちゃんと拭いたか?"など悪態つきながら、自らも放尿するが・・・飲むのを躊躇い、捨ててしまった・・・・血尿だったからだ。
ようやく光差すラストシーン。救助ボランティアの顔が覗き、一言放ったセリフが"もう死んでる"。室内は映し出されず声だけが聴こえる。助かったのは壁越しの顔の見えない彼らのほうだったのだ。
2018/12/20

A BETTER LIFE

sakai181219
Panasonic DMC-G8 M.ZUIKO DIGITAL 45mm F1.8 2017.05

映画『ブエノスアイレスの殺人』でのメキシコ人俳優デミアン・ビチルの演技が良かったので、少し調べてみたところ、米アカデミー賞にノミネートされたほどの実力者なんですね。そりゃ確かに、妻子持ちの中年刑事が美青年に熱を上げる役柄は、相当の演技者でなくては務まらないわ。その『ブエノスアイレスの…』の女性監督は、かの名作『ブロークバック・マウンテン』に影響されたというのも頷ける。

ビチルが主演しアカデミー・ノミネートされたという米映画『明日を継ぐために』(2011)をAmazonビデオにて鑑賞。メキシコ人移民のある父子の物語。



これはまた、切ない作品。"切ない"という言葉は感想文では原則として遣わないようにしているのだが。なんとも身につまされる物語。
不法滞在についての知識が無くても一応鑑賞できるが、米国移住後に生まれた子は米国籍に当たるという点は、ラストシーンにおいて知っておくべきだろう。

父子の関係性を軸に、メキシコ人移民の暮らし、治安状況などおのずと描かれる。彼らへの感情は、猥雑な街の壁などに書かれた"メキシコ人を殺すには弾が足りない"という落書きだけでも伝わる。

父子がちょっとしたロードムービーを演じるきっかけとなった、トラック泥棒のエピソードが辛い。妹に借りた金で、なんとか中古トラック購入し、庭師の自営業を切り盛りし始めた矢先、雇った初老の男に一切を持ち逃げされてしまう。警察には通報できない。
転居先を辿り、父子の執念(むしろ息子のほうが気が強い)で捕まえた、トラック泥棒、彼もまた不法滞在者で、故郷に送金した電信控えが、殴ったポケットからこぼれ落ちて。なおも怒り続ける息子を制す、父親の人間性がここでよく表される。

父だけが送還されるラストシーン。息子に、貧乏を嫌がり逃げて行った母親のこと、父親として満足にしてやれなかった悔みを涙ながらに謝るのが辛い。製作当時より、現政権においてはさらに過酷さを増していると思うと、この作品の存在は大きいのではないか。
2018/12/18

ブエノスアイレスの殺人

asa
Panasonic DC-G9 LUMIX G MACRO 30mm F2.8 2018.10

もう10年か20年以上前に目にしただろうか、記憶が曖昧ながら思い出すには、寂聴さんが担当していた雑誌の人生相談。妻と息子のいる、ある中年男性からの手紙には、ゲイポルノ・ビデオをレンタルしたところ、偶然自分の息子が出演しているのを見てしまった、自分の性的指向を息子も受け継いだのだろうか?、妻とこの件を話し合うべきだろうか?、といったものだったかと。
寂聴さんの回答は、奥さんには一切言ってはならない、という内容だったと思う。当時、それが適切な回答なのか釈然としなかったのを憶えている。
父親と息子の側は既に、その件で認識共有していたシチュエイションだったのか、詳細は忘れてしまったが、寂聴さんの回答は、まるで家庭において、あるいは異性間において同性愛を扱うこと自体がタブーであるかのような戒めのニュアンスだったように思う。
少なくとも、子供がアダルト出演した事について、金銭的な悩みを抱えているかなど、両親の間で話し合うべき事項があった筈なのだが。
今日、寂聴さんが同様の相談を受けた際、再び同じ回答をされるのだろうか?と。



ネトフリからアルゼンチン映画『ブエノスアイレスの殺人』を視聴。主演はデミアン・ビチル。これ、あまり視聴人気がなさそうだが、興味深い作品だった。
ある富豪がSMプレイに興じた末、何者かに殺されてしまう。ベテラン警部は、容疑のあるゲイ男性シンガーを、若手警察官を囮に捜査していく。・・・

クライムサスペンスとしては、むしろお粗末といってもいいくらい雑で、飛躍した展開なのだが、'80年代ディスコ・ミュージックをフィーチャーしながらのラテンのりの感覚に、観ているうちに許せてしまうようになる。
特筆すべきは、ビチル演じる妻子持ちの警部が、美青年の若手警官に思いがけず魅せられていく心理が、疑義と並行して意外に巧く表現されていた。この作品、警察署内を舞台に、いわゆるフォビアの要素が全く描かれないのも特徴だ。
囮のその警官とゲイ容疑者とのプレイを、落ち着かない様子でモニター盗撮する警部。上司として、手をかけられまいか捜査上の不安と、男性同士の交わりへの興奮が、ダブルで描かれる。これがビチルの抑えた演技力もあって巧いのだ。
娼婦のように派手な同僚女性刑事と衝動的にカーセックスしながらも、警部の心に既に青年がいるのが具体的に描かれていないのにプロセスによって理解できる。

ラストシーン近くの情熱的なキスは名シーンかと。それ以前に、メインストリートでの多数の馬が脱走するシーンは見応えあった。あの場面で、警部は、容疑を向けた若警官を俄かにボンネットに押さえつけ、自身のベルトを緩めたもんねぇ。あれは鮮烈。直後に召集パトカーのライトアップで、警部の欲情はかろうじて堰き止められたという。
デミアン・ビチルについては、北欧ドラマのリメイク『ブリッジ〜国境に潜む闇』で初見し、他でゲイ役を観てみたいと思ってただけに個人的にも当たり作となった。うだつのあがらなそうで惹き付ける、繊細な刑事役が似合う。
2018/12/16

惜しいエイリアニスト

port181215
Panasonic DC-G9 LEICA DG VARIO-ELMARIT 8-18mm F2.8-4.0 2018.11

ネトフリ・オリジナルドラマより『エイリアニスト』のシーズン1を視聴。20世紀前のニューヨーク暗黒街で少年男娼を狙う猟奇殺人犯を、精神病研究者(エイリアニスト)とその仲間が追う。主演はダニエル・ブリュール、ルーク・エヴァンス、ダコタ・ファニング。
以下、ネタバレあり。



最終10話まで犯人の全貌を隠してうまく引っ張ったほうだと思うが、同じ筋書きでもう少し脚本に工夫の余地があった気もする。
ムード自体は自分好みで馬車交通や女性の人権、貧困など視覚的にざっと再現、役者達のシリアスな演技もいい。男娼役の少年俳優たちの演技が巧くて驚く。中には古株のような中年女の仕草まで演じていた。

破綻を感じた点は、主人公学者ラズローと旧知の仲である警視総監ルーズベルトのやり取りの中で、資産家の息子シルバー・スマイルが怪しいという路線を、ラズローがいったん否定していたにも関わらず、ルーズベルトの認識が曖昧で、悪徳警察官が尚もシルバー・スマイルを追跡する状況に、視聴者は首を傾げるのではないかと。
そのシルバー・スマイルを容疑者路線として、銀歯の個性的なキャラクターを与えながらも、活かしきれなかったのは個人的に残念。もちろん入れ込みかけたキャラクターが敢え無くこと切れるのも意外性があるが、話を引っ張るだけの釣りに過ぎなかった見え見えの捨てエピのようで不満が残る。

物語が中盤に差し掛かりルーズベルトが少年の遺体の検視立ちあいで、初めて惨殺方法に言及し、ここで急展開を見せるのも何だかな。この後もラズローの相棒ムーアの過去事件の言及から関連性を見出すなど、現場に赴きながらも捜査仲間のふとした発言で恣意的に展開される。捜査陣が即席立ち上げであったゆえの凡ミス、例えば真犯人が囮捜査に姿を現したにも関わらず、会話に気が逸れている間に逃してしまうなど、こういうシーンはもどかしくも楽しいが。

ラズローとムーアのタッグは見栄えする俳優のキャスティングで悪くない。ただムーアとサラの恋の行方にはあんまり関心ないかな。事件毎にシーズン展開するパターンのようだね。