FC2ブログ
2020/01/12

反復のロードムービー

20200110
FUJIFILM X-T30 XF55-200mmF3.5-4.8 R LM OIS 2020.01

クリント・イーストウッド監督兼主演映画『運び屋』をWOWOWにて視聴。コンスタントにクオリティ高い作品を送り続ける御大に脱帽。自作自演、しかも高齢のヒーロー映画ときて、観ていて恥ずかしくならないのは稀ではないか。



プロットを知らず観た。主人公(イーストウッド)が大金を貰うためにブツの中身を把握せずに運び屋を引き受け、3度目にしてトランクを開いて見てしまったが、その後も主人公は飄々としたまま運び屋を続け、元締めのマフィアに気に入られ、招待にまで応じ、あてがわれた巨乳美人と戯れだした。

主人公の家族や周辺人物との確執を交えながらも、物語は他者に視点を譲ること無く、終始イーストウッドの動向を捉えたままの、シンプルな反復のロードムービーだった。

ネットやスマホに対する抵抗感は監督の意見そのまま投影されているようだ。昔なかったが今あるモノ。代わりに失った心を現代人にユーモア混じりに問い、ラストは清涼感を残しつつも、鑑賞各人に考えさせる動線張りの巧さよ。
2020/01/10

女囚パラダイン

shateki191231
Panasonic DC-G9 LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 2019.12

近所の植物園が園内で撮った写真をインスタで募集しているので、この際インスタやってみようとしたところ、随分前に一旦登録したまま全く利用していなかったようで、そのためかアカウントが停止されていた。復活させるには送信案内されたコード番号を紙に写したものを手にしたセルフ顔画像を折り返し送れ、と。えー、面倒くさ。
SNSでは乗っ取りや中傷などへの対応策としてセキュリティを上げるのは仕方ないとしても、指定された画像の撮り方、なんだか囚人みたいで気が進まない。



プライムビデオにヒッチコック監督映画『パラダイン夫人の恋』(1947)があったので視聴。『山羊座の下に』とか、このあたりの作品は未見のままだった。
グレゴリー・ペック、アリダ・ヴァリ主演に、メジャーならではの堂々たるカメラワークだが、物語の表現は中途半端だった。ヒッチ自身によると、かのトリュフォーとの対談本において、ペック等のミスキャストの不満を挙げていたらしいが、脚本が悪いんじゃないかなぁ。
メロドラマと法廷ドラマのシーンがメインだが、メロドラマ要素が法廷劇に巧く絡めて持ち込まれているとは評し難く、剛腕の若手弁護士(ペック)にして、盲人の夫を毒殺した容疑がかけられている依頼人(ヴァリ)の美しさに魅せられ、法廷の場で失恋する様態がヘタレで滑稽に見える。ヴァリはもちろん美しいが、事件の背景が説明不足過ぎ、ペックの夫人役の女優は、女囚に心奪われる夫に嫉妬しつつも、彼女も充分美しくチャーミングだから、ペックに感情移入しづらい。
しかしまぁ、古い映画とはいえ、被告の人格を外見から捉えるセリフが裁判シーンで飛び交いリアリティに欠け過ぎ。"美しい彼女が、そんなことするわけがない!""見た通りの悪女である"調子の弁論ぶり。

内容はすっかり忘れてしまったが、これならワイルダー監督『情婦』(1957)のほうがグッと胸に迫る法廷劇だったな。セルズニック下のヒッチ作品は、豪華だがまだやりたいことが果たせていない時期だったようだ。
2020/01/03

情の摂理

lastyear200102
SONY DSC-RX1R Carl Zeiss Sonnar T*35mm F2 2019.12

正月早朝のジム帰り、向こうからやって来る鳶職人らしき見知らぬ若い兄ちゃんから"おはようございますっ"と挨拶され。思わずこちらも返したが、はて。ジムトレそのままの恰好にブルゾン着てリュック背負ったこちらを同業者と見て取ったか?? 新調したばかりのスウェットなんだが?



『ヒトラー ~最期の12日間~ (字幕版)』をプライムビデオにて数日に分けて視聴。ヒトラーの秘書を語り部に、総統と側近達の地下生活を中心に終末が描かれる。
映像は非常に端的な演出がなされていて俳優陣も的確な演技で重厚だった。ヒトラーの恋人エヴァは、本編では秘書の視点で描かれているためか、酔狂しつつもある意味魅力的だった。それにしても観終わっても解らないのは側近達の自死するほどのヒトラーへの忠誠心だ。
本編を観る限り、重ねてポイントとなるセリフが出てくる。"国民のことなどどうでもいい"だ。軍幹部が市民軍の兵力を問題にしようが、"自業自得なのだ"と。
ここにはやはり、ヒトラー出現以前の背景があり、彼らには第一次世界大戦での敗戦がトラウマとしてあるように思える。二度負けるわけにはいかないのだ。

知識不足ゆえ、去年TVのドキュメンタリーにおいて、ナチの優生思想に基づいた純血アーリア人を生産するための、表向きは療養所とした施設が周辺国に点在していたのを初めて知った。映像は自身の出自を母親から隠された高齢のドイツ人男性。やがて彼は、あるジャーナリストとの交流をきっかけに、自身が母親と軍人との密会により宿されたのを知る事となり、療養所跡を再訪する。

私は元友人(閉店したバーのマスター)により、最大の屈辱を受けた可能性がある。以前から行く約束をしていた友人との吉田美奈子さんのライヴ鑑賞。大阪市内のライヴハウス前で待ち合わせした時のことだ。ビルのフロアの真ん中を突き抜けるようなエスカレーターを昇って、友人が先に居るかどうか開場待ちの行列を見回し、フロアを一周したところ友人を見つけた。そこはエスカレーターの丁度上がり口のところだった。
"さっきからここに居た?"と訊くと、友人"うん"。えっ、居たなら何でそっちから声掛けてくれないのだろう? 友人の返事は"別に・・・"だった。
このよそよそしさがずっと引っ掛かっている。思い出すにはこの直前のバーでのサシでの雑談中、私が、どこかの市会議員が同性パートナーシップ制度に異議を唱えようとエイズ蔓延をネタにしたというニュースに批判意見してから、付き合いが20数年以上の友人の目つきが変わったのだ。

ライヴ会場の賑わいを見通せる地点から、もしかすると彼は人混みを一周するこちらの様子を、他の人と何処が違うかテストしようとしていたのではないか?と。閉店以降、音信不通となった彼に、そのことを尋ねられないままでいる。
2019/12/25

ダニエル・ブレイクはいない

nagai191224
FUJIFILM X-T30 XF80mmF2.8 R LM OIS WR Macro 2019.12

ベランダから"No Smoking"のプレートを吊り下げて以来、階下からのタバコの匂いが止まったような気がする。季節的に窓を開放する回数が減ったせいかも知れぬが、意外と効果アリかもだ。店舗の連中、ブツクサ言ってたけどね。彼ら、こちらの裏通り側は、普通の話し声でも建物に反響して上階まで丸聴こえなのを未だに気づいてないのだ。オープン当初のオーナーらしき人物の従業員への指示声にはカチンときたものだった。"近所のことなんかどうでもええ、商売のことだけ考えとけ"。そんな下衆い店が東京のブランド地に進出し、ウチを本店と謳っているのだから嗤う。

ゆうべは、契約違反で商売やってる上階騒音カップルの女性のほうとエントランスで鉢合わせした。初めこちらは気づかず一律の挨拶した後、ひょっとしてこの女…とピンときた。居住主の彼氏が夜勤に出たのと入れ違いで毎夜やって来るのだ。伏し目がちに俯いたままなのは、少しは後ろめたさの自覚があるのか、単にいつもそうなのか。商用サイトに投稿した騒音についての丁重なこちらの質問に、ブロックでお返しすれば後々リアルにバツの悪い場面に出くわすことくらい、予想がつかぬのだろうか?

上下いずれも腹を立ててきた数年だったが、直接のバトルは避けてきた。あくまで管理人通しで、いよいよという局面まで顔を出さないつもりでいる。



ケン・ローチ監督の英仏作品『わたしは、ダニエル・ブレイク』をプライムにて鑑賞。心臓病を患った60歳前の大工ダニエルが、行政の審査で就労可能と判断される。役所通いのある日、職員に抗議する母子家族に遭遇したダニエルは、一家の貧困を助けながら、共に支え合うようになる。・・・

身につまされるシーンばかりだ。他人事じゃない。盥回しの行政指導。主人公は子供を持たないが、妻の介護を終え貯金が底をついている。この男は、母子を大工仕事で助け、フードバンク(食料配給)に連れて行く。そこでその若い母親は咄嗟になりふり構わず缶詰を貪り、惨めさに崩れ落ちる。

救いは主人公の親切心だ。私の周りにダニエルのような近所付き合いは無い。また、ダニエルのような自身カツカツの暮らし乍ら他人を助ける寛大さに欠けている。この自覚で精いっぱい。惨めである。

作風はドキュメンタリーを観るようで、シンプルな演出。1点気になったのが、ダニエルがシングル・マザーが売春に走ったのを庇うために、自ら客に成りすまして訪れた場面。彼女は恥ずかしく、姿を見ないでとあえて邪険な態度を男に取った。無理もない。
それ以前、一人親の会に参加したと彼女が嘘を付いて、コートのポケットから落ちたエスコート・サロンの電話番号メモを男が拾ったなら、その時に問い詰めるべきだった。この筋書き部分は過剰に映った。パルムドール受賞作。
2019/11/25

ヒッチのノンフィクション

worker191124
Panasonic DC-G9 LEICA DG SUMMILUX 25mm F1.4 2018.12

同じフロアのご近所さんが、ついに引っ越しされた。行き違いでお別れの挨拶が出来なかったが、やはりパン屋の早朝の業務用ミキサーの轟音に耐えかねたのだろう。ウチは独りだから、なるべく離れた部屋でドアなどで遮音して寝るようにしたけれど、あちらは家族暮らしだから、小さなお子さん達が真上で寝付けなかったのでは? テナント入れ替えで環境が急に悪くなってしまった。
ウチもこの場所にしがみつく理由も無いのだが、ちょうど『禁煙』のプレートを取り寄せたばかり。自室のベランダから下に吊るすことにしたのだ。理由はやはり店舗の従業員の休憩中のタバコ。
ステッカーだと雨に濡れて剥がれてしまうので、どうせ買うならとレトロな風情で紐を通せるモノにした。どうせ連中、これくらいの警告で止める気にもならないのも分かっている。せいぜいプレートのド真下でプカプカやるがいい。



ネトフリ解約して、先日から買ったまま寝かせていたヒッチコック監督、ヘンリー・フォンダ主演『間違えられた男』(1956)をブルーレイで初鑑賞。
この作品、実話に基づくとのことで、タッチが他とは異なる印象。つい仕掛けを期待してしまうぼくには、今の感覚では呆気なく感じたが、逆に抑制が冴えたフォンダの演技が見ものだろう。家族とのコミュニケーション以外、警察とのやり取りでは、されるがままの無口な男の心中を観る者に想像させてくれる。

フォンダに似た真犯人の強盗の風貌、確かに目鼻立ちははっきりしているが、背格好と帽子とコート姿が同じというだけ。あれほど証言台で断言した女性達の、ラストでのバツの悪そうな姿。
生活苦に夫の誤認逮捕と悩まされ続けた妻(ヴェラ・マイルズ)は、精神を乱して療養所に移るが、患者を取り巻く描写の仕方にはどうかと思う所はあった。